サステナブル融資、地銀16行が協働へ
滋賀銀行をアレンジャーとした銀行団16行が11月30日、電力小売りのシン・エナジー(神戸市)と、総額25億円の「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」契約を締結した。地銀のみからなるシンジケートローン形式でSLLを組成する取り組みは国内初となる。SLLは野心的な環境目標を達成した場合に、金利引き下げなど融資条件が優遇される仕組みだ。(オルタナ副編集長=吉田広子) 滋賀銀行は9月、地銀として初めてSLLの取り扱いを開始した。借り手がSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)に関連する挑戦目標「サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)」を設定し、それを達成した場合に金利などの融資条件が優遇される。 挑戦目標は、温室効果ガス排出量の削減や再生可能エネルギーの導入、リサイクル率など、本業に関連するESG項目を設定し、評価意見の意見を取得する。 同行のSLLはグリーンボンド、グリーンローンなどとは異なり、資金使途は限定されないという。 山元磯和・滋賀銀行大阪支店長は「近江商人の『三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)』の精神を継承する当行は、シン・エナジーのエネルギー事業で環境問題に貢献しようとする企業理念に共感し、今回の契約に至った」と説明する。 シン・エナジーの案件は、地域の事業体と協働で実施する再エネ発電所の建設件数、および新電力事業部が推進する地域新電力プロジェクトの組成件数を挑戦目標とし、毎年3件ずつ成立させることを目指す。 乾正博・シン・エナジー社長は、「これからの30年で、『新電力』『化石燃料ゼロ』『森林イノベーション』をキーワードに、資源や経済の地域循環を進めていきたい」と話し、千葉県成田市と香取市で進める地域電力会社の事例を紹介した。 地銀のみからなるシンジケートローン形式のSLL組成は、国内初となる取り組みだ。滋賀銀行のほか、千葉銀行、高知銀行、常陽銀行、徳島大正銀行、鳥取銀行、八十二銀行、阿波銀行、伊予銀行、関西みらい銀行、四国銀行、南都銀行、肥後銀行、山口銀行、但馬銀行、百十四銀行が参画する。 この背景について、嶋崎良伸・滋賀銀行総合企画部サステナブル戦略室長は、「当行のSLLは『中小企業版SLL』といえる。大企業だけではなく、サプライチェーン上にいる中小企業にも、ますます環境負荷低減やサステナビリティが求められていく。そうしたなかで借り手のサステナビリティ経営を後押しし、企業価値向上につなげていきたいという思いがあった」と話す。 「シンジケートとして他行と連携して融資することは、リスクヘッジという意味もあるが、地銀の使命を果たすという意味合いが大きい。競合ではあるが、企業が元気にならなければ、地域も元気にならない。横の連携を進め、ESGの視点を広めていきたい」(嶋崎室長)