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フェス中止が相次ぎ、音楽業界に大きな打撃。新型コロナは「体験重視」の時代をどう変えるのか

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ハフポスト日本版

新型コロナウイルスの影響で、経済的に大きな損失を被っている音楽業界。人が密集する文化イベントは大規模な感染リスクがあると考えられ、2月末からライブイベントのキャンセルが相次いだ。それからすでに2カ月以上が経つ。 ゴールデンウィークから夏にかけては、本来であれば全国各地で音楽フェスが始まる時期。しかし、今年は多くのイベントが中止・延期を発表している。 音楽フェスは、近年目覚ましい成長を遂げている産業だ。たとえば、日本最大規模の夏フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」は5日間開催で計33万人以上を動員しており、その他の多くのフェスも動員数は右肩上がり。 音楽業界だけではなく、飲食業、服飾業、観光・宿泊業、開催費用の一部を出資する協賛企業などの他業種も参入し、開催地域にもたらす経済効果も大きい。 『夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー』(blueprint刊)の著者であり、企業のマーケティング部門に所属しながら音楽ライターとしても活動するレジーさんは、現在の状況について、「CDを売る時代から、ライブなどの体験の時代に移行したのが2010年代の音楽業界で、フェスの盛り上がりはその変化を象徴していました。しかし、新型コロナの影響によって、その産業構造が立ち行かなくなってしまった」と指摘する。 「フェスの会場には一時的に生活空間が創出され、来場者は会場や近隣の飲食店・宿泊施設を使用して1日を過ごします。また、その前からフェスに向けて衣類やアウトドア商品を購入するなどの消費活動が行われますし、遠方への移動という形で交通機関の利用も促進されます。そのため、フェスは周辺に対する経済効果が大きく、中止によるダメージも広く波及すると考えられます」 現在、多くのアーティストやライブハウスがYouTubeでの投げ銭ライブや、クラウドファンディングを行っている。最近では、投げ銭やグッズ購入などもできるオンラインフェスも増えてきた。 レジーさんは、「応援をお願いしたい・応援したいという両者の気持ちが揃った時に、簡単かつスムーズにやりとりができる投げ銭やクラウドファンディングの仕組みは画期的です」と話す。ただし、持続性という面では課題があるという。 「いち生活者から金銭的支援を募る仕組みは持続性が見込めず、業界全体を底支えするものになり得るかは正直難しいと思います。オンラインフェスもオプションのひとつだとは思いますが、リアルのフェスのように1日1万円以上のチケット代をオンラインフェスに投じるのが一般的になるとは現時点では想像しづらいです。 しかし、こういったオンライン上の仕組みが整ったことで、今の非常事態が過ぎ音楽活動を本格的に再開する際に活用できるやり方もあると思います。たとえば、ceroが行った『有料でライブを配信+その後も期間内はアーカイブが視聴可能』という取り組みは、この先さらに注目されるはずです。 また、今後は、家の中でいかに楽しむかというのが社会全体の大きなテーマになると思います。その中では、たとえばZoomなどと組み合わせてフェスを擬似体験する、といった新しい楽しみ方も生まれてくるのではないでしょうか」 また、音楽に限らず、映画、アニメ、漫画などの多くの文化作品が無料で配信されているが、それが広がり定着することには注意も必要だとレジーさんは話す。 「文化や芸術に従事する方々は、作品を通して観客の精神面を支え鼓舞することを通じて収入を得ています。無料で作品を発表することは今の社会にとってとても意義のあることで、そうしたいという気持ちは尊重されるべきですが、当の従事者がそれによって困窮していくことはあってはならないと思います。本来はもう少し国からの実効的な支援も期待したいところなんですが」 この未曾有の状況では、経済的な打開策を見つけるのも難しい。レジーさんは、その一つの案として、フェスの仕組みがいかせる部分もあるのではないかと指摘する。 「もちろんどの業種も厳しく、簡単ではありませんが、フェスの協賛企業との関係性のように、音楽業界以外の産業と経済的につながる仕組みが増えたらいいなと思います。このコロナ禍において、たとえば企業が何かメッセージを発するために音楽業界とパートナーシップを組むような流れが作れると、長期的かつ大きいマネタイズ手段が生まれるきっかけになるのではないかと。 また、アメリカの『コーチェラ・フェスティバル』は開催が10月に延期となりましたが、会場の建設員が新型コロナによって不足する病床を確保するための仮設テントを建築すると報じられました(参考:Los Angeles TImes)。このように、フェスの会場を作るノウハウを活用して、これまでと違う形で社会との接点を見出すこともできるかもしれません」

若田悠希

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