50人かみついた野生イルカ、定置網に侵入 漁業者「不漁」被害訴え
福井県沿岸で過去3年間に少なくとも53人をかむなどして負傷させた野生イルカが、真夜中の定置網に侵入し、エサ場にしていることが分かった。記者が定置網漁に同行し、確認した。専門家は「人への依存から抜け出せなくなる恐れがある」と指摘する。 【写真】イルカが侵入した定置網 目撃者や専門家らへの取材によると、負傷事案を繰り返し起こしているのは、推定6歳のオスのミナミハンドウイルカとみられる。 夏の間、日本海沿岸の複数の海水浴場で目撃され、仲間同士でするような「甘がみ」を遊泳者にしてきたが、それ以外の時期の行動は分かっていなかった。 イルカの侵入を確認したのは、福井市の沖約3キロの定置網。沿岸の漁業者に取材するなかで目撃情報があり、許可を得て漁に同行。今年9月7日未明、定置網に出入りするイルカの姿を撮影することに成功した。 漁業者らによると、10キロほど離れた別の定置網にも頻繁に出没しているという。 三重大の森阪匡通教授(鯨類学)は、定置網を舞台に、漁業者が意図しないところで事実上の「餌付け」が続いてしまっている状態だと指摘。「イルカが定置網に頼り、居着くようになると、かみつき被害も続いてしまう」と懸念する。 イルカは11月に入っても定置網への出没を続けている。漁業者の間では「不漁はイルカのせい」と被害を訴え、捕獲を求める声も出ている。 だが、捕獲は法令で原則禁じられており、漁業者も自治体も打開策を見いだせていないのが実情だ。(乗京真知)
朝日新聞社