『嫌われる勇気』著者「怒りを言葉に変えていこう」
『嫌われる勇気』著者の岸見一郎氏と、気鋭の経営者が対話するシリーズ。 著書『ほめるのをやめよう』において、上司と部下が対等な関係にある「民主的なリーダーシップ」を提唱する岸見氏。上司と部下の関係においても、親子関係においても、「叱る」という教育を否定する。 【写真】柳澤大輔(やなさわ・だいすけ)氏/カヤックCEO それに対して、カヤックの柳澤大輔CEOは前回、「叱られて育った子どものほうが、大人になってからパワハラに遭ったときに強いのではないか?」と、疑問を呈した(関連記事「『嫌われる勇気』著者、『働きがいのない高収益企業』を許すな」参照)。 議論は、パワハラをする人の精神構造から、メタ認知の重要性へ。さらに、リーダーとして怒りの感情をいかにコントロールしたらいいかの実践的なアドバイスに発展していく。 ――パワハラ上司の下で働いたとき、精神的に強いのはどんな人か。柳澤さんから前回、そんな問題提起がありました。 「罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びるような環境で育ち、叱られ慣れている人のほうが、パワハラを受けても平気でいられるのではないか」。そう主張する人もなかにはいて、理屈として成り立たないわけでもない。岸見先生はどう考えられるか、と。 岸見:親が子どもに対等に接して育てれば、その子どもは大人になってからパワハラに遭っても、病むことはありません。そういう人は、「この上司は私に罵詈雑言を吐くけれど、所詮、そういう人なのだ」と、余裕を持って冷静に上司を見ることができるからです。 柳澤:絶対的な自信があるわけですね。 岸見:そうです。 ――逆に、上司から罵詈雑言を浴びて病んでしまうような人の弱さとは、何が原因なのでしょうか。 岸見:それを「弱さ」と呼ぶのは違います。 ――それでは、暴言を受け続けたときに、耐えられる人と耐えられない人がいるのをどう説明すればいいのでしょう。その違いは何なのでしょう。 岸見:暴言を吐く人がなぜそうするのかが分かっているかどうかです。親に民主的に育てられた子どもは、暴言を吐く人の心理が分かるので、病むことがありません。 柳澤:パワハラ上司のことも、客観的に見られるというわけですね。メタ認知が発達している。 岸見:そうです。 ――それでいいのでしょうか。