4年ぶりの再演『天保十二年のシェイクスピア』 熱い思いの溢れる公開稽古&囲み会見レポート
“闇”を“光”に変えていくような演劇体験を 浦井健治ら16名が登壇。思いが溢れた会見
その後に行われた囲み会見には、音楽の宮川彬良、演出の藤田俊太郎、浦井健治、大貫勇輔、唯月ふうか、土井ケイト、阿部裕、玉置孝匡、章平、猪野広樹、綾凰華、福田えり、瀬奈じゅん、中村梅雀、梅沢昌代、木場勝己の16名が登壇。藤田が「2020年に私たちのカンパニーは初演を迎えましたが、残念ながら全公演を上演することが叶いませんでした。僕は2020年の上演を共に作り、共に戦った仲間たちの思いをきちんと胸に抱き、2024-25年版をこのカンパニーで作っています。井上ひさしさんが作った、日本人のルーツを問う物語。このカンパニーでしか作れないと自信を持ってお届けできる作品です。夢は大きく“世界中の劇場で上演したい”。お客さまには劇場で大いに泣いて、大いに笑っていただけたら」と野望も織り交ぜつつ意気込みを。 前回はきじるしの王次を演じ、今回は佐渡の三世次に挑む浦井は「お稽古をしながら、やはり2020年の思い出が浮かんできます。志半ばで終わり、最後まで全うできなかった思いも含め、板の上に立つと『もう一度スタートが切れたんだな』と思いました。きっと(2020年に鰤の十兵衛を演じ、2021年に亡くなった)辻萬長さんも見てくれていると思って、笑顔で頑張りたい」と話した。 その鰤の十兵衛役を新たに演じる中村梅雀も「井上ひさしさんの言葉の力と、宮川さんの音楽が気持ちよく、カンパニーのパワーと温かさが本当に素晴らしい。私も今までお見せしたことのないような役をやっています。梅雀がやるとこんなふうになっちゃうんだ!と楽しんでいただけたら。萬長さんにも楽しんでいただけたら、と思っています」と話す。また隊長役の木場は「蜷川幸雄さんが演出をした2005年版からずっと、この役を演じています。役者を始めて55年になりますが、セリフの量の多さに今戦っています……」と控えめなコメントを。 ほか「きじるしの王次の役は、前回は浦井さんが演じられていたので、お話をいただいた時に光栄に思ったと同時に不安もありました。素晴らしいカンパニーの仲間に支えられながら、自分にしかない王次を模索しています。必死に稽古して、いい王次を見つけられるように頑張りたい」(大貫)、「前回の公演は(中止になった後に)最終日に、無観客でDVDのための撮影をしました。何かその時に抱いた崇高さと、置いてきてしまった気持ちを、今回この舞台でお届けできるということが嬉しい」(阿部)、「今の時代に生きるすべての人に元気と、明日も頑張ろうと思う気持ちをお届けできるように精一杯努めていきたい」(綾)、「最近にはなかなかない、年齢層の高いカンパニー(笑)。新人気分で挑んでいます。2020年公演の皆様の思いも大切にしながらお届けできたら」(瀬奈)等々、口々に熱い思いを話した。 また浦井の三世次の魅力を問われた藤田は「今の浦井健治さんのすべてが魅力的」と言い、「浦井さんの三世次は共感性が高く、(悪役ではあるが)自分の中にも三世次という人物がいるかもしれないと思わせてくださいました。同時に、三世次は絶対に生き続けてはいけない人物だなとも。このふたつは相反するようで、実は背中合わせのイコールだと思う。佐渡の三世次はこの世界にイエスとノーを同時に突き付けているのではないかなと感じます。そんな気づきを浦井さんの三世次は与えてくれています。人の暗部を光で抉るような、痛烈な人物が誕生しつつある。一言で言うと“好き”です」とユーモアを交えつつ表現。 演出家の絶賛を受けた浦井は最後に「木場さんが、三世次が亡くなるシーンでも井上ひさしさんはギャグをお書きになった、そこをちゃんと伝えないと泣いちゃうよとおっしゃってくれた。筆に一生を捧げた井上ひさしさんの思いを受け取らせていただいています。演劇は地続きであり、時代を映す鏡であり、時代を再生する装置。人から人に繋がり、お客さまにも伝わっていくものだなと感じていますし、亡くなった方もずっとそこにいて、忘れないでいることができる。忘れないってこんなに素敵なことなんだなと学ばせてもらっています。人間の闇を描いた作品ですが、お客さまが今の時代に闇を見たとしても、きっとそれを光に変えていくような、そんな演劇体験になればと思っています。一生懸命頑張ります」と真摯に語り、会見は終了した。 公演は12月9日(月) から29日(日) まで東京・日生劇場にて。その後大阪、福岡、富山、愛知でも上演される。 取材・文・撮影:平野祥恵 <公演情報> 『天保十二年のシェイクスピア』 作:井上ひさし 音楽:宮川彬良 演出:藤田俊太郎 出演: 浦井健治 大貫勇輔 唯月ふうか 土井ケイト 阿部裕 玉置孝匡/瀬奈じゅん 中村梅雀/章平 猪野広樹 綾凰華 福田えり/梅沢昌代 木場勝己 ほか 【東京公演】 2024年12月9日(月)~12月29日(日) 会場:日生劇場 【大阪公演】 2025年1月5日(日) ~1月7日(火) 会場:梅田芸術劇場メインホール 【福岡公演】 2025年1月11日(土)~1月13日(月・祝) 会場:博多座 【富山公演】 2025年1月18日(土)・19日(日) 会場:オーバード・ホール 【愛知公演】 2025年1月25日(土)・26日(日) 会場:愛知県芸術劇場