「イカゲーム」は肩を負傷したまま撮影していた?イ・ジョンジェ、“セクシーすぎる悪役”の撮影秘話を明かす
「イカゲーム」の主人公を演じ、全世界的なスターとなった俳優のイ・ジョンジェが、ひと味違う悪役の姿を披露した『ただ悪より救いたまえ』(公開中)。『10人の泥棒たち』(12)、『観相師 かんそうし』(13)、『暗殺』(15)などの作品で悪役を演じたことはあるが、偏執症で狂暴な性格を持つ殺し屋という、無慈悲なキャラクターを演じた。 【写真を見る】“セクシーすぎる悪役”と好評された殺し屋レイ役のイ・ジョンジェ 兄を殺した韓国国家情報院の工作員出身の暗殺者インナム(ファン・ジョンミン)を追いかけるレイ役を務めたイ・ジョンジェは、オールバックの髪型と派手な衣装、強烈なタトゥーで役作りをし、観客をより没入させる。この作品で演じた俳優たちとのタッグは、イ・ジョンジェのキャリアを振り返ることでもあった。 ――レイはとびきり強烈なキャラクターですね。“セクシーすぎる悪役”という感想もありますが、もともとそういう設定があったのですか? 「『セクシー』と言われたくて少し頑張りました(笑)。ただシナリオ通りに演技するだけだと観客が飽きてしまうかも知れないと思ったので、一味違う悪役の姿を見せられるように意識しました。実はシナリオ自体も、レイという人物に関しても説明はほとんどなかったですが、演技だけでなくヴィジュアル的にもレイを表現してみたかったんです。今回初めて個人スタイリストを雇用し、たくさん話し合いながらもっともレイらしいスタイリングを組みました」 ――ファン・ジョンミンさんと共演したくてこの映画を選んだという話を聞きました。『新しき世界』と同じキャストですが、そこは気にならなかったですか? 「『新しき世界』の撮影がとても楽しかったので、またいつかファン・ジョンミンさんと共演したいとずっと思っていました。『ただ悪より救いたまえ』は、『新しき世界』の配役が逆になったような印象を受けるかも知れませんので、そこだけは少し気になりましたが。もちろん全く違うキャラクターではありますが、ファン・ジョンミンさんの『新しき世界』での演技を真似しているような感じになっていないか、常に意識していました」 ――ファン・ジョンミンさんとの再会はいかがでしたか? 「息を合わせなければならないアクションシーンが多かったので、2人でたくさん話し合いましたね。撮影が終わってからも一緒に食事に行って、作品について議論したりしました。海外ロケで撮影したので、一緒に過ごす時間も長かったですね」 ――パク・ジョンミンさんとも『サバハ』(19)に続いて、2回目の共演ですが、彼の演技はどうでしたか? 「パク・ジョンミンさんは本当に天才だと思います。多分本人も分かっているでしょうね(笑)。でもとても謙虚な人で、現場でもいつも大人しい感じでした。しかし撮影に入ると、誰にも真似できない演技を披露するんです。『どうやってああいう表現ができるのかな』と、見る者をして感嘆させる場面が何回もありました」 ――作品に対する満足度はどうですか。 「とても高いです。特にタイのマフィアたちとの銃撃シーンが一番に残っています。台本には『レイが建物の中に入ると、タイのマフィアたちは座っている』『シャッターが上がると、血が付いた姿のレイが立っている』としか書いてなかったです。なのにタイに到着すると、いきなりアクション監督に『格闘シーンがあったほうが良さそう』と言われて(笑)。急遽練習して撮影しましたが、すごくいい感じに仕上がりました。レイがどんな風に敵と戦って相手を制圧する人なのか、このシーンで見せてあげたかったですね」 ――代役を立てずにすべてのアクションシーンを演じたらしいですね。怪我もされたようで、大変でしたね。 「もう歳だから体が思い通りに動かないのが一番つらくてもどかしかったです。撮影中に肩を負傷してしまって、現地の病院に行ったら手術しなければならないと言われましたが、撮影を優先すべきだと思ったので、手術は後回しにしました。その後、すぐに『イカゲーム』の撮影が始まったので、結局未だに手術を受けられていない状態です」 ――映画『ハント』では初めて監督としてデビューされますね。1999年の『太陽はない』で共演したチョン・ウソンさんをキャスティングしたようですが。 ――「もう、片思いですよ(笑)。チョン・ウソンさんとは『太陽がない』のあとにも共演する機会があるだろうと思っていましたが、気付いたらこんなに月日が経ってしまいました。同じ作品にキャスティングされるまで待つよりは、2人で意気投合してなにかを作ってみないかという話は10年前からしていましたが、なかなかうまく行かなくて。でもやはり新しいことに挑戦したいという熱望があったので、『ハント』という作品を準備しながらチョン・ウソンさんに声をかけました」 ――1993年にドラマ「恐竜先生」でデビューして、間もなく俳優30周年になりますね。いつも新しいことにチャレンジしている印象ですが。 「正直、限界を感じる時も多いです。もっとたくさんの人に新しい姿を見せたいという欲はありますが、自分の中のエネルギやアイデアが枯渇してしまっている感覚があって、プレッシャーを感じることもあります。そういう時は運動や散歩をしながらリフレッシュしています。ファン・ジョンミンさんやパク・ジョンミンさんのような、すばらしい俳優たちの演技を見て刺激も受けますし。インスピレーションを得ることができるとしたら、どこにでも行きたいし、なんでも挑戦したいですね」 取材・文/楊智媛