【なぜ?】「三角窓」消えたワケ 「カーエアコン大衆化」のほかにも……
カーエアコン無き時代の冷却方法
text:Kenichi Suzuki(鈴木ケンイチ) editor:Taro Ueno(上野太朗) 【写真】フロントウィンドウが開く?【ジープ・ラングラーとはどんなクルマ?】 (170枚) 自動車の歴史は技術進化の歴史。 その進化の過程で消えてしまったモノは数多い。その1つが「三角窓」だ。 三角窓とは、前席の横にあるドアの窓、その前方の三角形部分が開閉できるようになったもの。 三角窓を開けると、窓の一部がクルマの外側に飛び出す格好になる。それが、ちょうど進行方向から吹いてくる風を車内に取り込むことができる。つまり、夏場の走行中に、涼しい外気を導入することができたのだ。 これが、カーエアコンのない時代のクルマの最大の室内冷却方法であった。 そのため、箱型のクルマが普及する1930年代には、すでに三角窓が存在し、その後長らく、ほぼすべてのクルマには三角窓が装備される時代が続いた。 1950年代に本格的にスタートした日本車も同様に、当時のクルマには三角窓が備わっていたのだ。 それが一変するのは1970年直前だ。 1967年に登場する日産の3代目ブルーバードを筆頭に、1970年登場のトヨタの2代目カローラ、4代目コロナ、初代カリーナ、日産のチェリー、1971年の4代目クラウン、4代目グロリアなど、続々と人気モデルが三角窓を廃止する。 そして1970年代後半になると新型車への採用は、ほぼゼロに……。 10年もたたずに消え失せてしまったのだ。
「三角窓」消えた理由に「見栄え」も?
三角窓が消えてしまった理由といえば、「カーエアコン」の登場と普及がまず挙げられる。 カーエアコンは、高級なオプションとして1960年代後半から普及してきたのだ。 ちなみに、当時のカーエアコンは、助手席の前、ダッシュボードの下に吊り下げる、後づけの機械であった。また、外気を導入する車体構造も1960年代を通して進化していた。 そうした、技術の進化によって、夏場の車内の冷却を一手に引き受けていた三角窓の役割がなくなり、消え失せてしまったのだ。 しかし、筆者は、もう1つ別の大きな理由があると考えている。それが「見栄えの良さ」だ。 1970年に三角窓を廃止したカローラなどのニュースリリースを見ると、わざわざ「三角窓を廃止した」と記載されている。 「三角窓がなく、大きなウインドウの近代的な明るさ」と説明されていたのだ。カタログには「三角窓がなく、よく見えて安全」ともある。 三角窓がないことが、売り文句になっていたのだ。 当時とすれば、「三角窓はあってあたりまえ。それがない」というのは見た目の斬新さになったことだろう。 そうした「見栄えの良さ」も、三角窓があっという間に消えてしまった理由の1つに違いない。