金大病院で全国初投与 認知症新薬「ドナネマブ」
●県内70代女性に「治療の選択肢広がる」 金大附属病院は29日、米製薬大手イーライリリーが開発したアルツハイマー型認知症新薬「ドナネマブ(商品名ケサンラ)」を使った治療を開始した。病院によると、全国初の投与で、この日は軽度認知障害(MCI)と診断された石川県内の70代女性が治療を受けた。担当した脳神経内科の小野賢二郎教授は「これまで治療が難しいと思われた人にも選択肢が広がる」と強調した。 【写真】アルツハイマー認知症新薬「ドナネマブ(商品名ケサンラ)」 20日から保険適用となったドナネマブは、アルツハイマー病の原因とされるタンパク質「アミロイドベータ」を取り除き、病気の進行を緩やかにする。アルツハイマー病によるMCIや軽度の認知症患者が投与の対象となる。 ドナネマブを投与できる医療機関は、常勤の専門医が複数いることやMRI(磁気共鳴画像装置)など投与の際に適切な検査が可能なことなど国の定めた条件がある。金大附属病院はこれらの条件を満たし、治療薬を使用する体制が十分に整っていたため、全国に先駆けて投与が始まった。 昨年実用化された「レカネマブ」は2週間に1回の点滴が必要なのに対し、ドナネマブの投与間隔は4週間ごと。女性は通院の負担を考慮し、ドナネマブを選んだ。「いい薬が入ってくれて良かった。体が良くなればうれしい」と効果に期待した。 脳神経内科には今年1月、「レカネマブ外来」が開設された。これまで石川や富山などから100人以上の患者が受診し、そのうち60人を超える患者にレカネマブによる治療を実施してきた。 現在は、同病院で半年間、患者を受け入れた後、石川、富山両県にある9カ所の連携施設で治療を継続してもらう体制となっている。今後は「抗アミロイド抗体外来」と名称を変更し、レカネマブとドナネマブを使った治療を続ける。 認知症薬の効果を研究する小野教授は、それぞれの薬で副反応や効果が異なるとし「アミロイドベータ以外の原因物質にも効く薬の開発に貢献できるよう、診療に励みたい」と力を込めた。 ★認知症 脳の神経細胞の働きが弱くなり認知機能が低下し、日常生活に支障が出る状態。発症者の7割近くを占めるアルツハイマー型では異常なタンパク質が脳に蓄積し、物忘れや失語などの症状が出る。原因物質を除去して症状の進行を抑える薬として「レカネマブ」に続き「ドナネマブ」の保険適用が決まった。