サブマリンを「絶滅危惧種とは言わせない」 ソフトバンク高橋礼、先発で勝負
重要な一翼、でも「自信が持てない」
プロ野球ソフトバンクの右腕、高橋礼投手は有数の下手投げだ。プロ入りに際し、その投法に触れて「球界で絶滅危惧種とも言われるが、そういうのをなくしていく。これからアンダースローをやる子どもたちに希望を与える選手になりたい」と誓った。2年目の2019年に12勝を挙げてパ・リーグ新人王に輝き、20年は中継ぎでチーム最多の52試合に登板して4勝2敗23ホールド、防御率2.65。4年連続日本一に貢献した。 〔写真特集〕懐かしの野球場10~東京スタジアムから平和台まで~ 成績だけを見れば充実していたはずの3年目だが、本人は「よっしゃ、これだけやった、という納得したシーズンではない」。ブルペン陣を支えた1年で感じた難しさや収穫を踏まえ、再び先発へ―。入団時の誓いは有言実行に近い。プロ4年目。さらなる高みを目指す25歳の熱い思いに迫った。 20年シーズンの当初は、前年同様に先発で勝負するつもりだった。2月の春季キャンプではインターバルを入れたブルペン投球を行い、課題のスタミナ強化を図った。しかし、キャンプ終盤に歯車が狂う。左太もも裏を痛めて離脱。開幕までの戦列復帰は絶望的だったが、状況が変わった。新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れ、調整する時間ができた。 4月末にブルペンでの投球を再開。紅白戦、対外試合と順序を踏み、先発ローテーションからは漏れたものの、中継ぎで開幕1軍入りした。6月19日、ロッテとの開幕戦(福岡ペイペイドーム)。1―1の延長十回に登板してきっちり抑えると、その裏に栗原がサヨナラ打を放ち、高橋礼に白星が舞い込む。救援投手として順調に滑り出した。 開幕当初はロングリリーフも可能な「第2先発」を担うべくブルペンに入った。だが、次第に勝ち試合の七回を任されるようになった。モイネロ、森につなぐ「勝利の方程式」への重要な一翼だ。相手打線にとっては、剛腕の千賀や東浜ら先発のオーバーハンドに目慣れしてきたところで出てくる下手投げの変則タイプには対応しにくい。首脳陣には、そんな意図もあったはずだ。 ただし、高橋礼本人の心中は複雑だった。「自分が七回に投げることを想像していなかった。(最初は)怖いもの知らずで投げていたが、1カ月くらい経って調子も悪くなってきた。どうやったら良くなるんだろうとかいろんなことを考える中で、自信が持てなくなって、なかなか気持ちの部分で折れてしまう部分があった」 ◇好成績の裏に、歯がゆい内容 不安に輪をかけたのが、春先に痛めた左太もも裏の状態だ。「調子を落としてからは、左のハム(ハムストリング=太もも裏)の状態が悪いんじゃないかと思った。周囲にもそう言われて、リハビリを兼ねたトレーニングをやって、技術練習になかなか時間を割けなかった」と打ち明けた。コンディションに自信を持てないことが、投球フォームの安定感にも影響した。 「自分の中で、これというものがなかった。これだけは、という芯があれば崩さずに軸として何とかできたけど、そういうものが見つからず、悩みながらやってきた。そこが納得いっていない」。20年の好成績とは裏腹に、歯がゆさばかりがにじむ。表向きの数字を細かく見ると、心情が透けて見える。登板52試合で計51回を投げて、被安打42、与えた四死球は33個。投げる試合はほぼ1イニング限定だが、3人でぴしゃりと抑えるというより、走者を出しながらも要所で踏ん張ったという内容が多かった。