[Bリーグ]アルティーリ千葉は「偉大なる歴史の始まり」をどう締めくくるか
ベルテックス静岡との館山対決GAME2に勝利し2位確定
“THE GREAT HISTORY BEGINS.” 偉大なる歴史が始まるというキャッチコピーを掲げ、新規参入チームとしてB3リーグに臨んだアルティーリ千葉が、37勝7敗(勝率.841)の2位という成績で2021-22シーズンを終えた。当初オールラウンドな活躍を見込んだレオ・ライオンズが開幕から7試合出場した時点で故障離脱となり、その後フロントラインの戦力を安定させるのに苦心するシーズンとなった中、キャプテンの大塚裕土、最年長の岡田優介、そして小林大祐と決定力の高いベテランを一つの核として、アンドレ・レマニスHCが指揮を執るハイレベルなバスケットボールで多くのファンを獲得し、期待に応えてきた。 大塚が開幕前に語った「全勝でB2昇格」という目標はかなわなかったが、新型コロナウイルスのパンデミック、そして故障者続出という厳しい状況に対応しながらB2昇格決定戦2021-22への出場権は確保した。その間、イバン・ラべネルとケビン・コッツァーのビッグマンの堅実な貢献と杉本慶の安定したプレーメイクを土台に、バックコートでは秋山熙、藤本巧太、フロントラインでは鶴田美勇士、紺野ニズベット翔の成長がチーム力を高め。途中から加わった山崎玲緒、野口龍太郎の若手ガードもロスターに前向きな刺激をもたらした。 4月24日、千葉県立館山運動公園体育館でベルテックス静岡を大逆転の末109-106で破って今シーズン2位の座を確定させた後、大塚は「ホームでしっかり2位を確定できたのは皆さんにとって良かったと思います。今シーズンはまだ来週もまだありますけど、ケビン(コッツァー)とイバン(ラべネル)の外国籍2人で頑張ってくれていたり、すごく大変なシーズン。チームワーク面でケミストリーが思っていた以上になかなか生まれなかったりいろいろなことがありました」とそれまでのシーズンの流れを振り返った。「最低限のチャンスがまだあるということで、それを得られたのはすごく良かったと思います」。 A千葉はこの試合でぜひとも2位の座を決めたかったはずだし、A千葉側のファンもそう願っていたに違いない。その週の連戦に臨む前の時点で4試合を残し、リーグ制覇の望みも残しながら2位確定マジック1という状況。対戦相手の静岡は3位で、マジックの当事者であるとともに、14連勝で館山に乗り込んできた「勝利に飢えたチーム」だった。会場は同じ千葉県でホームゲームとはいえ、普段慣れ親しんだ環境とは異なってもいた。 加えて最終週に対戦する金沢武士団は、今シーズン1勝しか挙げていない最下位のチーム。「来週に持ち越しても2位は決まったも同然」という気のゆるみが出るようなら、静岡に連敗して消沈した状態でレギュラーシーズンを終えることにもなりかねない。23日の初戦を83-96で落とし、同日長崎が岩手ビッグブルズに勝利したことで、長崎の優勝が決まった。24日の試合は、自らの王座への望みも絶たれた中、負けても言い訳がきくトリッキーな要素がそろっていた。 逆に静岡とすれば、初戦で勝って連勝を15に伸ばした勢いに乗り、ライバルチームの2位確定を阻止して勝負を最終週に持ち込もうという意欲がチーム全体にあふれていた。当日の会場には“ベルスター”と呼ばれる静岡のブースターの姿も多く見られたが、皆なんとかして2位の座を奪い取る流れを思い描きながら応援していたことだろう(静岡は24日の試合には敗れたものの、翌週トライフープ岡山に連勝して意地を感じさせた)。 太平洋に面した房総半島の西南端にある館山市での今シーズン唯一のホームゲーム・シリーズ。地元の子どもたちの熱い視線も注がれる中、恥ずかしいプレーを見せられるわけはない。来シーズン以降A千葉がホームアリーナとする千葉ポートアリーナ以外で試合をする機会は減少する可能性がある。この先館山でプレーする機会はどれだけあるかわからない。同時に、千葉県内外から時間と費用を費やして見に来てくれた人々も少なくない。普段観戦できない人々、チームに対する大きな期待を抱いた人々が一つになってチームを後押ししてくれるこうした機会に、しっかりしたプレーを見せるのだという思いをチームとして大事にしたい―。大塚はかねがねそんな思いを語っていた。初戦はそれが、トリッキーな状況下でやや空回りしたかもしれない。 しかし24日の試合では、A千葉は前半32-45と劣勢を背負いながら、延長の末の109-106というスリリングな逆転勝利をつかむ。勝因は大きく分けて2つあった。一つはチーム全体としてディフェンス面でのタフさを見せつけたこと。もう一つは、前半シューティングハンドの右手に相手のハードなファウルを受け一時ベンチに下がった岡田の奮起だ。岡田は後半の2つのクォーターと延長の5分間で、3Pショット7本を成功させて27得点。延長では先制の3Pショットを含め、点の取り合いの中で8連続得点を奪っていた。 集中力を増した “ノックダウン・シューター”の手から放たれるボールは次々とゴールを射抜いた。その鬼気迫るプレーぶりから「勝つ」「決める」という岡田個人としての決意を感じたファンも多かったはずだ。