<私の恩人>人気演出家が敬愛する鶴瓶の人柄
俳優、脚本家、演出家、映画監督として活動する宅間孝行さん(43)。日本一泣ける劇団とも呼ばれた「東京セレソンデラックス」を昨年末解散し、現在は新たに立ち上げたプロジェクト「TAKUMA FESTIVAL JAPAN」の第1弾公演「晩餐(ばんさん)」(東京・サンシャイン劇場、27日まで)に取り組んでいます。前進を続ける宅間さんにとって“道しるべ”となっているのが、落語家・笑福亭鶴瓶さんでした。 鶴瓶さんと初めて会ったのは、2005年のドラマ「タイガー&ドラゴン」(TBS系)。そこでご一緒して以来、本当にありがたいことなんですけど、1本も見逃すことなく、僕の舞台をすべて見に来てくださっています。 出会って1年後の06年、僕が結婚する時に婚姻届の証人になってもらったのも、笑福亭鶴瓶さんだったんです。 婚姻届を提出して半年くらいしてから披露宴をしたんですけど、人前式で、オープンな雰囲気でやりたいということで、ガーデンパーティーみたいなことをしたんです。ただ、自分の中で一つこだわりがあって、その人の前で愛を誓うことになる神父さん役を、どうしても鶴瓶さんにやってもらいたかったんです。 悩みつつも、無理を承知で前日に電話をしました。「本当に申し訳ないんですけど、あす、1時間くらい早く会場に来てもらうことは可能ですかね?実は、神父役をやってもらいたいんです。衣装とかは、全部こちらで用意しますんで」とお伝えすると、こともなげに「全然かまへんよ」と快諾していただいた。 ただ、すぐさま「…せやけど、カツラはどうするんや?」と。「いや、ヅラは要りますかね?」と返すと、「そら、ヅラはないとアカンやろ」と即答されたんです。 「いったい何のこだわりなんだろう?」と思いつつ、ふと気づきました。「この人、神父じゃなくて、新婦役をやろうと思ってる?」と。すぐさま「新婦じゃなくて、神父の方です」と訂正したんですけど、こちらが恐縮しながら頼んでいることよりさらにハードルの高いことでも、相手のためになるのなら、一も二もなくOKしてくださる。その懐の深さというか、そこに鶴瓶さんの人柄が表れているように思いました。