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畑中純「まんだら屋の良太」愚かさ賢さ湯に肩並べ【あの名作その時代シリーズ】

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西日本新聞
畑中純「まんだら屋の良太」愚かさ賢さ湯に肩並べ【あの名作その時代シリーズ】

畑中純さんが版画で描いた「良太と月子」(左)と九鬼谷温泉の鳥観図(右)。「福智山麓に設定したが、連載を続けるうちに温泉街はどんどん広がっていった」と畑中

 ずいぶん久しぶりに読みふけった。通勤電車の中で。取材に向かうバスの中で。際限なくスケベな一コマ一コマを、隣に座った女性客の視線から隠すようにして。劇画調の描線からにおい立つのは温泉郷の湯煙だけではない。性欲、金銭欲、暴力、ずるさ、賢さ…。生身の人間の強烈なにおいが鼻を突く。  「九鬼谷の千両万両湯舟の中で 人の愚かさ賢さが肩を並べて笑ってござる 千両もろても湯谷はいやよ 鬼の巣じゃもの谷じゃもの 万両のおみやげ持たせてあげよ 花も実もある谷じゃもの」  作者、畑中純が掲げた案内に誘われる。読む者は、いつしか幻の九鬼谷温泉を旅する。  峠を行くバスはうなりを上げた。JR小倉駅前(北九州市小倉北区)から「九鬼谷温泉行き」に乗る。街を抜け、紫川の源流へ。バスは福智山麓(さんろく)を目指す。約三十キロ、一時間ほど揺られる。「国見峠」を越えると、たなびく雲はるか、ひそかに浮かぶ桃源郷「九鬼谷温泉」が眼下に広がる。  地図に、その名を見つけることはできない。畑中は「生まれ育った北九州・小倉の中でも特に好きな南はずれにユートピアをつくりたかった」という。門司を有する企救(きく)半島の付け根、小倉南区の鱒淵ダム付近にあたる。半島名をひっくり返した温泉名。「昔、谷には鬼が住んでいるといわれた。鬼は人間の欲望。九鬼谷にはいろんなタイプの鬼がいるのです」

本文:2,354文字

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