一斉に寿命到来、都内桜の名所ー「ふるさと納税」活かす目黒区保全対策とは
目黒区はふるさと納税「サクラ基金」創設 伐採した桜で作った“さんまペーパーナイフ”を贈呈
このまま放置していたら倒木の恐れもあり、重大な事故につながりかねません。 「そうした危険を回避するために、老木化した桜を伐採することになるでしょう。しかし、桜は区の財産でもあります。伐採することは簡単ですが、桜を後世に伝えていくことも大事です。区内の桜を守るために、目黒区は2014(平成26)年3月11日に“目黒のサクラ基金”を創設したのです」(同)。 2014年に創設された“目黒サクラ基金”には、2016(平成28)年2月末時点で約800万円の寄付が集まりました。これらは、ふるさと納税として扱われるため、目黒区は2016年1月から1万円以上の寄付者に“さんまペーパーナイフ”を贈呈しています。 目黒の名物として知られるサンマをかたどった “さんまペーパーナイフ”は、保全のために伐採した桜の幹を使って製作されていることもあって、基金の普及啓発にもつながっています。
清掃負担もあり、今後の植え替えでは品種を近隣住民で検討
「現在、集まった寄付金を使って目黒区の各地域に植えられている桜の診断をしています。その診断結果をもとに、本格的に植え替えをするのか、それとも樹勢回復処置で済ますのかといった判断をします。これらは、行政だけではなく、近隣住民をはじめ誰もが参加できるサクラ再生検討委員会の話し合いで決めています」(同)。 近隣住民の間ではソメイヨシノが圧倒的に人気のため、検討委員会の植え替え計画でも引き続きソメイヨシノを植えてほしいとの要望が多いといいます。しかし、ソメイヨシノではなく、別の樹種を植えるケースもあるようです。 「街路樹や緑道に植えられている桜の場合、散った花びらの清掃は近隣住民が担当しているケースがほとんどです。そうした住民の多くは高齢者で、頻繁な清掃は重い負担になります。負担を軽減するため、ソメイヨシノと色が似ていて、花びらの数が少ないコシノヒガンザクラへと植え替えることもひとつの案として提案しています」(同)。 診断や検討委員会での話し合いを進め、来年をメドに目黒区は桜の植え替えを進める予定にしています。桜のある美しい風景は、多くの人を魅了します。今後とも目黒区の取り組みに注目です。 小川裕夫=フリーランスライター