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お盆と「火」 「迎え火」「送り火」の意味とは? 火を息で消さない理由は?

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オトナンサー

 新型コロナウイルスの影響で、各地の夏のイベントや行事が中止・縮小されていますが、毎年8月16日に京都の夜空を彩る「五山送り火」も、今年は規模を大幅に縮小して行われます。この「五山送り火」は観光客にも人気がありますが、そもそもはお盆の行事。「送り火」「迎え火」など、お盆では「火」が大事な意味を持ちます。 「送り火」「迎え火」の意味、ろうそくや線香の火を息で消してはいけない理由など、お盆と火にまつわる疑問について、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。

故人の霊魂が「この世」に戻る

Q.まず、「お盆」の意味を教えてください。 齊木さん「お盆とは、亡くなったご先祖さまを供養する行事の一つです。仏教の多くの宗派では、先祖の霊がお盆に各家庭へ帰ってくるとされています。故人の霊魂が『あの世』と呼ばれている浄土から、『この世』(現世)に戻ってこられる期間のことをいい、亡くなった家族やご先祖さまの精霊(しょうりょう)、つまり霊魂をお迎えし、供養します。 これは、亡くなった父母を供養する中国伝来の仏事『盂蘭盆会(うらぼんえ)』と、先祖を敬い感謝する日本古来の『祖霊信仰』とがまざり合って形作られてきたものです。かつては、貴族や武士など限られた人々だけが営むものでしたが、江戸時代から庶民にも広まり、現代に受け継がれています。 元々は旧暦7月15日前後の行事でしたが、日本は明治6(1873)年に新暦になり、多くの地域では、ちょうど1カ月ずらして、8月15日前後に行われるようになりました。現在のお盆はかつての旧暦の日程に近いので、『旧盆』『旧の盆』と呼ばれることもあります。東京の一部や石川県などでは、新暦の7月15日を中心に行われています」 Q.「迎え火」とは、どんな意味があり、どのようにするのでしょうか。 齊木さん「迎え火とは、あの世からご先祖さまの霊が迷わずに帰ってこられるよう、玄関先や庭でたく火のことです。迎え火は旧暦7月13日(8月13日)の夕方、自宅の玄関先などで、素焼きの『焙烙(ほうろく)』という土鍋に、麻の皮をはいだ茎である麻幹(おがら)や稲わらなどを折って積み重ね、火をつけて燃やし、先祖の霊を迎えます。麻幹を燃やしたその煙に乗って、先祖の霊が家に帰ってくるともいわれています」 Q.「送り火」についても教えてください。 齊木さん「送り火とは、ご先祖さまがこの世からあの世へ迷わずに帰ることを願い、たく火のことです。旧暦7月16日(8月16日)の夕方に、『迎え火』と同様、自宅の玄関先などで、素焼きの焙烙に入れた麻幹や稲わらを燃やします。その煙に乗って、お盆をともに過ごした霊(ご先祖さま)が無事に戻れるよう願うのです」 Q.「迎え火」をお墓参りの際につけ、それをちょうちんにうつして家に帰る地域もあるそうです。どのような意味があるのでしょうか。また、お墓で、ちょうちんではなく、ろうそくに火をうつして帰る地域もあると聞きました。 齊木さん「お墓で迎え火をする場合は麻幹を燃やして、ご先祖さまを迎えた火を盆ぢょうちんにうつし、そのまま自宅に持ち帰ります。ご先祖さまは火に乗るとされているので、ご先祖さまの霊魂が迷うことなく、自宅までお連れする意味があります。また、夕刻にお連れしますので、危なくないよう足元を照らす意味合いもあります。ろうそくに火をうつして帰る地域やご家庭もあります。ろうそくの火を目印に、ご先祖さまを自宅までお連れする意味があります」 Q.マンションやアパートに住んでいて、家の前で火をたくのが難しい場合、どのようにすべきなのでしょうか。 齊木さん「マンションなどの共同住宅の場合、迎え火や送り火をたく代わりに、盆ぢょうちんを飾ることで、この世と死後の世界を往復するご先祖さまの霊の目印とします。先祖の霊は盆ぢょうちんの明かりを目印にして、家に帰ってくるといわれています。 ちょうちんは玄関や部屋の窓際、仏壇の前などにつるします。ちょうちんはろうそくの火をともせるようになっていることもありますが、危ないので火を入れずに、ただ飾るだけで迎え火とする場合も多いです。最近は安全のために、盆ぢょうちん用のろうそく形電池灯もあります。目印としてろうそくをともすだけでも、心を込めれば、ご先祖さまに通じるのではないでしょうか」 Q.お盆では、ろうそくや線香を使いますが、ろうそくや線香の火を消す際、「息を吹きかけて消してはいけない」と言われます。なぜでしょうか。 齊木さん「ろうそくの火というのは、煩悩に悩む私たちを照らす仏様の知恵や、お慈悲のぬくもりを表すとされています。また、線香の香りはご先祖さまの食べ物といわれています。それに対して、私たちは仏教の教えの中で『身口意(しんくい)の三業』という言葉があるように、身体・口・意志という3つの大きな『業(ごう)』を抱えた存在です。 『息でろうそくの火を消してはいけない』『線香の火を息で消してはいけない』というのは、そんな不浄な口から吐いた息を仏様の神聖な火にかけるのは不適切という考えからきています。どうすればよいかというと、手であおいで火を消すのが一般的かと思います。その場合、手を左右にパタパタさせてあおぐのではなく、上から下に一振りで、さっと消すのがスマートです。このとき、指をしっかり閉じておくのがポイントです。 また、ろうそくに関しては『香箸』という火箸で芯を挟んで消すか、ろうそくに上からかぶせる『火消し』を用意しておくと、無用な気遣いをせずに火が消せるので非常に便利です」

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