そこにはすべての道がある! トヨタの若手テストドライバーをニュルに送り込むワケ
ニュルで260km/h、5速全開のジャンプ、そしてライバル車との壮絶バトル
トヨタではマスタードライバー制という、新しいテストドライバー制度を採用している。成瀬マスタードライバーを中心にシニア、ジュニアといった若手テストドライバー育成プログラムを実施しているのだ。今回のニュルテストもそんな若手テストドライバー育成の場として実施している。彼等はニュルをどう捉えているのか。 すでにニュル経験豊富なシニアドライバーの近藤正人さんは、ニュルについて「バクロ時間が長く評価の白黒がハッキリするコース」と証言する。テストコースではつかみにくい限界に近い微少領域での善し悪しが、ニュルでハッキリと出る。隠されたものが簡単に暴露されてしまうということ。また3年ほどヨーロッパにいた近藤さんが「ニュルにはすべての道がある」というのも、説得力のある話だろう。 一方今回が初参加となる2人の若手、ジュニアドライバーはどのように感じたのか。 高橋郁磨さんは「ニュルの暴露時間」によって自信がついたという。それまでおぼろげながら感じていたものが、ニュルを体験したことで鮮明に確認できたからだ。ニュルのコース自体は、豊富な予備知識によって大きな驚きはなかったそうだが、話しやビデオだけでは伝わらない「緊張感」が大きな収穫だったとのこと。また片山智之さんは、「ライバルが常に存在し、ニュルのアグレッシブなところが勉強になった」と語っている。 この2人に共通するのが、高い目標を持っていること。「トヨタをライバルのベンチマークにさせたい」、「トヨタのどのクルマにかかわらず世界に通用するものにしたい」など、世界の頂点となる現場を知ることで、その目標がよりリアルになったからだろうか。 いずれにせよ、トヨタ車あるいは若手を含むテストドライバーも、このニュルを走り込むことによって、ますます磨きをかけることは間違いない。これからのトヨタのスポーツモデルに、さらなる期待ができるはずだ。 ニュルで260km/・・・
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中谷明彦/城市邦夫