桑名名物の『焼きはまぐり』古代の名古屋めしだった? 熱田区の遺跡から大量にハマグリ発掘 専門家「常食の可能性高い」【企画・NAGOYA発】
◇第34回「名古屋めしのルーツは!?」その2 名古屋の定番グルメを指す言葉と言えば、「名古屋めし」だ。2001年ごろからその名称が浸透し、みそカツ、きしめん、みそ煮込みうどん、あんかけスパゲティなどがソウルフードとして取り上げられてきた。それでは名古屋めしのルーツと呼ばれる料理は果たして何か? 名古屋めしの歴史をひたすらたどってみる。(構成・鶴田真也) ◆【動画】名古屋めしのルーツは 名古屋女子大短期大学部・遠山佳治教授インタビュー NAGOYA発 ◇ ◇ ◇ 戦国時代よりもさらに過去にさかのぼると名古屋めしに該当する料理や食材が出てくるか。縄文時代の名古屋市内の貝塚からハマグリを主体にした出土例がある。貝塚とは廃棄された貝殻のごみ捨て場のこと。同市熱田区の玉ノ井遺跡では大量のハマグリが発掘された。同市教育委員会の埋蔵文化財報告書(2003年、第3次)によると、さまざな貝類が発掘された中でハマグリの比率が最も多く全体の33.04~30.93%。別の発掘場所では60.61%というところもあった。 国内の貝塚ではシジミの割合が多いとされ、浜松市の蜆塚遺跡では出土した貝殻の90%以上がヤマトシジミだった。一方、玉ノ井遺跡ではヤマトシジミは1%未満。周辺の浅瀬や干潟がハマグリの一大産地だったといえる。 木曽三川の対岸にある三重県桑名市は江戸時代から「焼きはまぐり」で有名だが、名古屋市博物館学芸課の冨田航生さんは「縄文から古墳時代にかけて近隣のどの遺跡でもハマグリはそれなりの割合が混じっているため、当時の(名古屋周辺の)人がハマグリを常食していた可能性は高い」としたが、「ハマグリの採取は日本各地で同様に確認される現象」とも付け加えた。 それでも奈良時代の文献に記述がある豆みそは調味料として臭みを消す効果があり、桑名市名産の「ハマグリのしぐれ煮」には豆みそ由来のたまりじょうゆがベース。名古屋市港区には同市唯一の「藤前干潟」もあり、ハマグリ料理が先史時代、古代の名古屋めしだった可能性はある。 ◇ ◇ ◇ ○…明治期に誕生した料理、食材もある。例えば、鶏料理に使われる地鶏ブランド「名古屋コーチン」。明治時代の1882年ごろに現在の愛知県小牧市内で養鶏業を営んでいた元尾張藩藩士の兄弟が中国から入手したバフコーチンと地元の地鶏を交配して産まれたとしており、1905年に日本家禽(かきん)協会によって国内初の実用鶏種として認定された。 蟹江町や名古屋市南部で作られる伝統料理に「いなまんじゅう」がある。まんじゅうと言いながらもお菓子ではなく魚料理。蟹江川などの下流域に生息していたボラの若魚「イナ」を使い、赤みそに根菜やギンナンなどを加えて甘く煮たものを中に詰め、香ばしく焼き上げた珍味だ。明治初期に地元の料理店が考案したという。 ◇ ◇ ◇ 【参考文献】 「間違いだらけの名古屋めし」(大竹敏之、ベストセラーズ) 「名古屋めしのもと」(名古屋市博物館、「名古屋めしのもと展」実行委員会) 「なごや飲食夜話」(安田文吉、中日新聞社) 「日本の食文化に歴史を読む」(森浩一他、中日出版社) 「聞き書 愛知の食事」(「日本の食生活全集 愛知」編集委員会、農山漁村文化協会)
中日スポーツ