富津市、イオンモールに市立図書館 来年4月開館へ 市民からは期待と不安
富津市の市立図書館が、大型商業施設「イオンモール富津」(同市青木1)内の空きスペースに整備される。イオン側から昨年5月に提案があり、財政難のため建設を先送りしていた市は好機と捉え、2023年4月の開館を目指している。公立図書館整備への市民の関心は高く、期待と同時に懸念や要望も相次ぐ中、市は計画を進めてきた。 市立図書館整備が計画されているのは、イオンモール富津3階北側の空きスペース約1450平方メートル。契約期間10年、賃料が月額10万円。蔵書数6万5千冊で開館し、その後段階的に8万冊へと拡充する。 指定管理者によって運営され、開館時間は午前10時~午後8時を予定。22年度は初期導入費として施設改修やシステム構築、図書購入費など総額2億5千万円、23年度以降は運営経費を年間約7千万~1億1千万円と見込む。開館後、図書館協議会を設置し、市民ニーズに対応するという。 テナント閉店が相次ぐイオンにとって集客増が見込まれ、市も初期導入費用が抑えられるほか、市民が買い物ついでに立ち寄れるなど「費用対効果と利便性を兼ね備えた施設」とする。 10年3月、市は図書館機能と保健・福祉の機能を併せ持つ「(仮称)福祉・教育施設整備基本計画」を策定したが、厳しい財政状況などから実現しなかった。しかし、18年度の市民アンケート調査では図書館を望む声が多く寄せられ、図書環境の整備は長年の懸案となっている。 日本図書館協会の要件を満たす公立図書館がないのは、全国792市のうち富津市を含む7市。現在、市内には2公民館と市民会館の図書室計3カ所のほか、移動図書館車1台が稼働。蔵書数は約6万3千冊だが、人口1人当たりでは県平均の3・16冊に対し1・47冊、貸出冊数も県平均の4・61冊を大きく下回る0・5冊となっている。 計画浮上後、待望の図書館を歓迎する一方で、「市民の声を反映しきれているのか」「店舗の存続そのものが危ぶまれている」など、市民参画を求める声やイオン撤退の懸念などを巡り質問書や要望書が相次いだ。このため、市は素案を公表した上で修正を加え、パブリックコメントを経て基本計画を策定した。今後、市議会での予算審査を経て、22年度に設計業務や指定管理者の選定など、開館準備が本格的に進む予定だ。