エバートン対マンチェスターC「ペップ・シティ 」完勝に見る「日本代表の遠藤・中山」の可能性
覚醒中のドイツ代表MFは不在だったが、影響はなかった。2月17日に行われた対エヴァートン戦。イルカイ・ギュンドアンは鼠径部を痛めて欠場した。マンチェスター・シティは、昨年12月のウエスト・ブロムウィッチ戦以来、12試合で11ゴールと爆発的な得点力を見せつけてきたMFを欠くことになったが、ペップ・グアルディオラの「信念」は全く揺らがなかった。 【動画】エバートン対マンチェスターCは3対1で「ペップ・シティ 」が完勝 前半から敵陣でボールを回してシティが主導権を握った。安定したボール・ポゼッションはもちろんのこと、何よりボールを失った瞬間のリアクションが、ペップのチームが好調であることを物語っていた。攻守が切り替わる時の足取りは軽く、前線からの守備で奪い返す。時間帯によっては自陣でブロックを構築し、エヴァートンにボールを回させる様子からは、首位を独走するチームの貫録が垣間見えた。 32分にフィル・フォーデンが先制してから間もなく、38分に事故のような形で追い付かれたが、ペップのチームは全く動じなかった。まるで0-0から試合をやり直したかのように、落ち着いてパスを繋ぎ続けると、63分にリヤド・マフレズが、78分にベルナルド・シウバがゴールを決め、3-1でエヴァートンを下した。試合後、敵将のカルロ・アンチェロッティは次のようなコメントを残して、白旗を振りかざしている。 「シティは私たちが今シーズン対戦した中でベストのチームだ。 彼らのクオリティは素晴らしく、信念を持っていて、強い」
このエヴァートン戦でギュンドアンが不在だったことで、シティのキー・プレイヤーがジョアン・カンセロであることが、かえって浮き彫りになった。ペップの思想を具現化するポルトガル代表SBは、この試合でも“カンセロ・ロール”を披露。偽SBの範疇を超え、ロドリの隣でボランチとしてプレーするだけでなく、ボックスの手前でインサイドハーフとして攻撃に厚みを持たせた。 タッチラインをSBとして上がることもあれば、試合の終盤には、シウバとフォーデンを前にトップ下のようなポジションも取っている。仮にカンセロを欠くようなことがあれば、シティのポゼッションの質はガラリと変わってしまうだろう。 話は逸れるが、この“カンセロ・ロール”を日本代表のサッカーに導入してみても面白いのではないだろうか。目下、日本代表の左SBのポジションは長友佑都の後釜を探しているところだが、昨年10月のカメルーン戦では安西幸輝が、コートジボワール戦では中山雄太が先発。11月のパナマ戦は3バックだったが、再び4バックのメキシコ戦では中山が先発した そもそも中山はボランチの選手であり、“カンセロ・ロール”を託してみても面白い。そうすれば、遠藤航をワンボランチに置く[4-1-2-3]の布陣を試すことができる。もしくは、中山か他の誰かをワンボランチにおいて、遠藤に託してみる。 シティではSBが本職のカンセロがこなしているが、重要なことはポジショニングとパスのセンスであって、本職がSBである必要はないだろう。そもそもペップのサッカーには本職も何もない。むしろ本職がボランチだからこそ、遠藤と中山に“カンセロ・ロール”の適性はあるとも言える。 もちろんペップの戦術を模倣することは簡単ではないし、日本代表が“カンセロ・ロール”を使えるのは、力関係で優位に立てるアジアのチームに限られるだろう。しかし、相手が引いてくることも予想されるW杯アジア予選を戦う上でのオプションとして、一考の価値もあるのではないか。全く機能しない可能性もあるが、得点力不足改善の劇薬になる可能性もある。
本田千尋