26年度完成見通しの滝室坂道路、接続道路も着々 県が整備、安全性と利便性向上へ
大分、熊本両県を結ぶ「中九州横断道路」の一部、滝室坂道路(阿蘇市、6・3キロ)が2026年度中に完成する見通しとなった。国土交通省熊本河川国道事務所が整備を担い、昨年6月にトンネル(約4・8キロ)の本坑が貫通した。熊本県は滝室坂道路の出入り口と国道57号に接する新たな県道の整備を進める。同事務所は「道路が完成すれば、交通や防災の課題が解消する」と強調する。 滝室坂道路は同市一の宮町坂梨と波野小地野を結ぶ。幅12メートル、片側1車線の自動車専用道路で、総事業費は約661億円。12年の九州北部豪雨で国道57号が被災したことを受け、整備の検討が始まった。 豪雨の際、国道57号の滝室坂では土砂崩れや法面[のりめん]崩壊などが発生し、40日間通行止めとなった。豪雨後、雨量が基準値を超えた場合に通行止めとする運用を開始。梅雨時期などには、2倍近い時間のかかる迂回[うかい]路を通る必要があった。このため、国交省は13年、滝室坂道路を事業化し、18年に工事を始めた。
国道57号の滝室坂は、急カーブによる交通事故も多い。熊本河川国道事務所によると、12~21年に県内全域の国道で起きた事故のうち、正面衝突や積載物の落下、車両横転といった事故の割合は4・4%。一方、滝室坂周辺の国道57号では21・4%と5倍近い割合になっている。「道幅も狭く大型トレーラーなどはカーブで中央線をはみ出してしまう」と同事務所。 国道57号の滝室坂の平均縦断勾配は6%で、急な坂が交通事故や渋滞の一因だった。滝室坂道路が開通すれば、同勾配は4%と改善する。同事務所は「1日でも早い開通を目指し、工事に取り組む。地元住民らには、不便をおかけするかもしれないが、丁寧に説明していく」と話した。 国道57号と滝室坂道路をつなぐのは、県が工事を進める県道・内牧坂梨線の新しいバイパスだ。12年の豪雨で土砂崩れや冠水が起きた現道を山際から離し、拡幅、かさ上げして防災力向上を目指す工事の一環。国道57号から北に0・7キロの地点が滝室坂道路の出入り口となる見込みだ。工事区間は約4・1キロ。事業費は32億円で約2分の1を国の補助金でまかなった。
県阿蘇地域振興局は、「周辺の利便性向上に加え、土砂災害などで現道が不通となった際には、避難道としても機能する。滝室坂道路の開通までに整備が完了できるように工事を進める」と話した。(小田喜一)