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「女の子のため、休めない」 緊急事態宣言下の風俗店経営者、それでも店を開くワケ

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弁護士ドットコム

新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言を受けた地方自治体による休業要請で、バーやナイトクラブなどと並んで、風俗店も「基本的に休止を要請する」対象施設となった。感染につながる「濃厚接触」が生じるサービスを提供しているにも関わらず、営業を続ける店舗もあったが、取り巻く状況が変わった。 【写真】元ヤクザのうどん、福岡名物になる ある経営者は「明日の金に困る女の子のために休めない」と当面は様子見の姿勢を取るが、一時閉店も視野に入れる。ただし、「どうやっても続ける」と息巻く同業者もいる中、キャストと呼ぶ女性を奪われないかなど、不安を抱えている。(ジャーナリスト・高野真吾) ●デリヘルも「基本的に休止を要請する」店舗になった 「行政や警察からの連絡ですか? 何もないです。気にしているのは、ほかのお店がどうするかですね。18日の土曜日までは営業して、様子を見ます」 東京に隣接する県でデリヘル(デリバリーヘルス・無店舗型風俗店)を開く40代の男性経営者は、筆者の電話取材に言葉を選びながら答えた。 東京都は4月13日夜、HPを更新。「問い合わせが多かった施設」が示される中、「基本的に休止を要請する」対象施設にデリヘルが明記された。 10日の発表では、「遊興施設等」の中に「個室付浴場業に係る公衆浴場」(ソープランド)、「ヌードスタジオ」「のぞき劇場」「ストリップ劇場」は明記された。この時点ではデリヘルの文字はなかった。 デリヘルは店舗数が多く、働いている女性、スタッフも多数にのぼるだけに、動向が注目されていた。 ●売上は「3分の1」に激減していた 男性がデリヘル経営を始めたのは、2011年秋ごろ。知人の地元で、彼と2人での出発だった。ほどなく経営者は男性1人になったが、開始から3、4年は順調そのもの。2014年、15年ごろのピーク時には、月商1500万円を誇っていた。 ところが、その後、同じエリアでライバル店が増加すると下降線に。昨年は月商400万円まで落ちていた。キャストと呼ぶ女性の在籍人数も、ピーク時に50~60人いたのが、20~30人にまで減った。 何とか立て直そうと奮闘しているタイミングで直撃したのが、コロナウイルスの感染拡大だった。それでも3月半ばごろまでは、さほどの影響を感じなかった。大きな変化を感じたのは、3月下旬。東京都の小池百合子都知事が、都民に週末の不要不急の外出自粛を要請し、隣県の知事も続いてからだ。 「目に見えて、急激にひどくなりました」 1週間で100万円ほどの売上があったのが、いきなり3分の1以下に。経費削減に動くしかなかった。ホームページの更新やキャストの出退勤管理を手伝ってもらっているアルバイトスタッフの出番を減らした。日曜日の営業もやめた。 しかし、従業員や家賃の支払いなど一定の固定費は生じる。厳しさが増す中、4月を迎えることになった。 ●キャストの応募がなくなった もちろん、できる限りのコロナ対策はしてきた。 客にサービスするキャストの女性はもちろん、従業員、アルバイトスタッフの体温を測定。以前から使用した物品にアルコール除菌をするなど、衛生管理には気をつけていたが、より意識を高めた。 これまでは都内から通ってくるキャストもいたが、都内在住者はリスクが高いと判断し、受け入れをやめた。新規の外国人客もとらないようにした。キャスト用の寮を持っているため、地方からの出稼ぎ女性も受け入れてきたが、最近は女性からの応募がなくなった。 男性とスタッフはマスク着用も徹底しているが、キャストには外出を控えるように頼むのが限界だ。あちこちに遊びに行っているキャストもいるようだが、「従業員(雇用)ではないので、行動制限をかけるわけにはいかない」 対策の限界を感じながら、経営を続けてきた。 ●出勤しないキャストが出てきた そもそも、キャストが客に施すサービス内容は「濃厚接触」そのものだ。「客、キャスト、スタッフ、私と順番に感染するリスクは消せない。自ら一時的に閉めようかという気持ちもありました」 迷う気持ちを消しながら過ごすうち、4月8日の緊急事態宣言を迎えた。すると、今度は客側ではなく、キャストの女性たちに変化が現れた。 「コロナが怖いから出勤したくない」「うつりたくないから、しばらく休みます」 こう申し出て、出勤シフトから外すように依頼してくるキャストが現れた。 男性は、この動きを次のように解説する。 「出勤しないと言った女の子たちは、恵まれているほうです。デリヘル以外の仕事があるか、それなりに貯金があり、当面の暮らしに困らないか、ですから」 「どうしても出勤を続けないといけない子もいます。貧困すれすれの社会的弱者で、うちの仕事で稼ぐ日銭が生活の頼りという子たちです。彼女たちは、何があっても店を開け続けてほしいと言っています」 こうした女性がいる限り、自分の独断で休業要請を受けるわけにはいかないと考えている。 また、仮に一時休業した場合、ほかに営業を続けるデリヘルが近隣にあれば、女性たちがそちらに流れてしまうおそれもある。そうすると、休業期間後に再開できず、そのまま店を閉じることになってしまう。 男性が情報交換した別のデリヘル経営者は「何があっても続ける」と息巻いたという。実際、デリヘルの店舗数は多く、営業を続けても、行政や警察から何も言われない可能性もある。休業すればもらえるという協力金も、男性は「すぐにもらえるわけではないだろうし」とさめた目で見ている。 ●「人の欲望は止められない」 男性は売上が3分の1に減ったと嘆いていたが、筆者は正直、客はゼロなのではないかと予想していた。 ホテルなどの1室で「濃厚接触」のサービスを受けるため、キャストから感染するリスクを考えざるを得ない。 もし、感染したら、感染経路確認のため、行政や会社から行動履歴の提出を求められる。このタイミングで、デリヘルを利用する必然性が見当たらないと考えていたからだ。 「そこは性産業の特殊性です。人の欲望は止められないですから」 男性の店舗では、新規顧客がHPの写真を見て選ぶ「写真指名」では、サービス料に追加1000円をもらう。以降、リピーターになった客が、キャストを名指しで選ぶ「本指名」をすると、追加2000円をもらう。 いまの売上を支えるのは、「本指名」してくれる客だ。 「お気に入りの女の子には、定期的に会いたいのでしょう。お気に入りと遊んでいるだけなら、コロナにかからないと思っているのです」 業界歴10年を超して、客の思考を熟知する男性は淡々と語った。

弁護士ドットコムニュース編集部

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