病院発砲事件は「ケーキ片手に発砲事件」の報復か 過激化する山口組分裂抗争
5月10日午前11時過ぎ、三重県伊賀市内の病院の駐車場で複数発の銃声が鳴り、指定暴力団・絆會の直系組織の谷奥由浩組長が右上腕を粉砕骨折する重傷を負った。絆會は六代目山口組から分裂した神戸山口組から再分裂する形で結成された組織である。2015年の山口組分裂からこれまでも抗争事件は多数発生してきたが、今回の事件は「分裂抗争のステージが変わった」とみられ、不穏な空気が漂っている。 【写真】暴力団界隈に流出した、銃撃事件直後の現場
今回の事件の詳細を全国紙社会部記者が語る。 「谷奥組長は女性を車で病院に送り届けたあと、車中に1人でいたところを銃撃されています。この病院の周辺には民家が建ち並び、駐車場にも複数の防犯カメラはあったものの、犯人は白昼堂々犯行に及び、現場から途中まで徒歩で逃げている。犯行の一部始終がカメラに映るリスクを顧みないところから強い殺意がうかがえます」 事件から4日後、六代目山口組傘下組織の組員・清水勇介容疑者が千葉県内の警察に出頭し、銃刀法違反の疑いで逮捕された。清水容疑者の逮捕を受け、今回の事件は六代目側からの“報復”だった可能性が指摘されている。 「今年1月、茨城県水戸市で六代目山口組の傘下組織の神戸達也若頭が事務所で射殺される事件が起きました。犯人は近くの洋菓子店で購入したケーキを片手に事務所を訪れ、玄関で応対した神戸若頭と揉み合いになった末、射殺しています。犯人はいまだ捕まらず、有力な情報もありませんが、事件前に神戸若頭が所属していた組と絆會との間で組員の引き抜きを巡るトラブルが起きていました。六代目山口組側は神戸若頭射殺を絆會の犯行と考え、報復に出たと見られています」(同前) 絆會は当初、「任侠山口組」と称していたが、「山口組」の看板を下ろしたことで、現在は分裂抗争から一定の距離をとっていると見られていた。 「以降、六代目側は神戸山口組側に絞って抗争事件を繰り返してきたが、ここにきて変化が起きています。六代目側は絆會だけでなく、神戸山口組から離脱した池田組にも3月から立て続けに3件の抗争事件を起こしている。両組織に対して、離脱してもターゲットであるという意思表示でしょう。
当然、神戸側に対してはより危険度が高い抗争を起こしている。5月8日、神戸側ナンバー2の入江禎・宅見組長の自宅に車両特攻が行なわれましたが、入江組長を狙った抗争は初めてです。今年の8月で分裂から7年が経ち、司忍組長は80歳、高山清司若頭も今年で75歳になる。抗争終結を急ぐ六代目側が本格的に全方位抗争をしかけたといえるでしょう」(同前) 一方で、六代目側も中核組織である弘道会の傘下組織組長が5月13日、大阪市繁華街のビルとビルの隙間で遺体として発見され、大阪府警は殺人事件として捜査を始めている。犯人はまだ分かっていないが、予断を許さない状況が続いている。