捨てるから救う、循環社会へ:メルカリジャパンCEO
フリマアプリで知られるメルカリだが、実は社会性の高い企業理念を持っている。同社で日本事業を統括する田面木(たものき)宏尚・メルカリジャパンCEOは、「資源を循環させることで循環型社会の公器になりたい」と話す。(聞き手・森 摂=オルタナ編集長、池田 真隆=オルタナS編集長)
─2020年6月期第4四半期(2020年4─6月)の決算で上場してから初めて黒字となりました。循環型社会を目指していますが、今後の展開を教えてください。 2020年6月期通期決算は、売上高が762億円(前年同期比48%増)、第四半期(4─6月)だけを見れば営業損益が3億6400万円で上場以来初の黒字となりました。月間の利用者は1755万人に達し、前年度の取引高の合計は6259億円と堅実に成長しています。 ただ、今後も赤字を出す可能性はあります。利益を追求するよりも、より世界にとって必要なマーケットプレイスになりたいという思いが強いので、今後も規律ある投資をしていく方針に変わりはありませんが、機会と見れば、成長に向けた投資は積極的に続けていきます。 フリマアプリでモノを購入することは慣れてきたと思うのですが、出品することはまだ社会に定着していません。月に1755万人に使っていただいておりますが、10─30代が7割を占めます。 50代に関してはわずか9%と、今後は上の世代にどう広めていくかが重要だと認識しています。
潜在客は3千万、不用品を市場に
─日本には「箪笥(たんす)の肥こやし」という言葉が象徴するように箪笥に洋服などをため込んだままの家庭は少なくないと思います。40代以上にはどのようにして訴えますか。 我々の調査でも「メルカリ」を認知し、出品意向はあるが、未出品の潜在出品顧客を推計で3610万人と試算しています。初めての出品にハードルを感じている方が多いので、その誤解を解くために出品方法をお伝えするオンライン講座などをしています。 実際、生前整理にメルカリを使う人や古い着物などをご自身でハンドメイドして出品する高齢者の方は増えている印象です。越境ECサポートとの連携により100カ国以上での越境販売も展開していて、海外の方には日本的なグッズがよく売れる傾向があるので、箪笥に眠る品物はニーズが高いと思います。 創業者の山田進太郎は新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創ることを目指して起業しました。シ―ズンが終わり、着尽くしたダウンジャケットを「不用品」ととらえる人がいれば、別の国の人で「欲しい」と思う人もいます。 廃棄を防げるし、買い手にとっては安価で購入することができます。これが世界に新たな価値を生み出すと考えています。 ─創業者の山田さんは世界一周を経て、サービスの構想を思いついたらしいですね。世界一周をして、様々な国を見て歩いたのですが、目についたのは日本の物質的な豊かさでした。 日本では捨てていたモノでも、別の国では価値があると考え、フリマアプリで資源の循環ができるのではないかと考えたのです。