賃金改善を見込む企業は42.0%で7年ぶりの低水準に 新型コロナによる業績低迷が大きく響く
2020年は、国内景気を「回復局面」とする企業は、3年連続で1ケタ台にとどまる一方、「悪化局面」とする企業は、2012年以来8年ぶりに5割超となるなど、より厳しさの増す1年となった(帝国データバンク「2021年の景気見通しに対する企業の意識調査」)。新型コロナウイルスの感染拡大が企業活動に大きく影響を与えているなか、日本経済団体連合会(経団連)は雇用維持と事業継続を最優先にするため一律の賃上げを打ち出さない方針を示すなど、今後の賃金動向が大きく注目されている。 そこで、帝国データバンクは2021年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。
2021年度の賃金改善見込みは42.0%、2014年以来7年ぶりの低水準に
2021年度の企業の賃金動向について、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引き上げ)が「ある」と見込む企業は42.0%となり、2014年度見込み(46.4%)以来の水準まで落ち込んだ。前年度である2020年度見込み(53.3%)と比較しても11.3ポイント減少している。一方、賃金改善が「ない」と見込む企業は28.0%、「分からない」とする企業は30.0%となり、総じて2021年度の賃金改善には慎重な見方をしている様子がうかがえる。 2021年度の賃金改善見込みを規模別でみると、大企業は38.2%となり、中小企業(42.9%)を下回った。小規模企業でも37.0%と4割以下となっている。 業界別では、依然として人手不足が顕著な『建設』の47.8%が最も高い。また、2020年度見込みと比較すると、旅行代理店や旅客自動車運送など観光関連業種を含む『運輸・倉庫』(36.7%)では18.5ポイント減となるなど、賃金改善見込みは大きく減少した。
賃金改善の内容、ベースアップ、賞与(一時金)ともに大幅に減少
2021年度の正社員における賃金改善の具体的内容は、「ベースアップ」が35.9%で、2020年度見込みから9.3ポイントの大幅減だった。「賞与(一時金)」は20.3%となり、同6.0ポイント減少していた。国内景気の回復とともに、2018年度見込みまではいずれも増加傾向であったものの、2021年度見込みでは大幅に落ち込む格好となった。 企業からは、「雇用確保の観点からベースアップは最低限行いたい」(内装工事)という意見がありつつも、「新型コロナウイルスの影響がどう出るか分からず難しい」(各種商品卸売)や「この状況だと毎月の給与額を維持することで手一杯で、賞与は出せない」(デザイン業)といった、現状の厳しさに関する声が多くあげられていた。