日本ダービーでジオグリフ以上にダノンベルーガに魅力を感じるわけ。「もはや古傷のことは気にしなくていい」
過去10年のGI日本ダービー(東京・芝2400m)で、最も多くの勝ち馬を出しているのは、GI皐月賞(中山・芝2000m)の"負け組"だ。 【画像】鷲見玲奈さんインタビューカット集 昔から「ダービーは皐月賞で脚を余した馬」、すなわち"負け組"を狙え、と言われている。その格言は、現代の競馬でも生きているようだ。 そして今年のダービー(5月29日)においても、皐月賞馬のジオグリフ(牡3歳)以上に、同2着のイクイノックス(牡3歳)や、同4着のダノンベルーガ(牡3歳)に対して魅力を感じている関係者やファンのほうが多いようだ。 とりわけ、関係者のなかで注目度が高いのは、ダノンベルーガである。 理由はいくつかあるが、そのうちのひとつが、皐月賞が"負けて強し"の内容だったからだ。関西の競馬専門紙記者が解説する。 「皐月賞は7枠のジオグリフが勝って、8枠のイクイノックスが2着。この結果からもわかるように、当日は内が悪くて外しか伸びない馬場でした。そんななか、伸びない内枠、それも1枠1番から4着に食い込んだのが、ダノンベルーガ。内容的には勝ちに等しく、もし外枠を引いていたら、勝っていたと思いますよ」 レース映像を見直してみると、それはよくわかる。 ダノンベルーガの鞍上・川田将雅騎手は、おそらく道中のどこかで馬群の外に出して、そこからが勝負と考えていたに違いない。ところが、スタート後から勝ったジオグリフにずっとマークされる形に。まさしく外から蓋をされたような状態で出るに出られず、その状態が直線入口付近まで続いた。
つまり、勝負どころでの進路が馬場の悪い内にしかなかったのである。あれでは、力を出しきれなかったとしてもやむを得ない。むしろ、そういった状態に陥りながら4着に食い込んだことを評価すべきだろう。 もともとセレクトセールで1億6000万円(税別)という高値で取引された素質馬。そして実際、デビュー戦を圧勝し、2戦目のGIII共同通信杯(2月13日/東京・芝1800m)でも鮮やかな勝利を飾ってクラシック候補に名乗りを挙げた。 最大の武器は、強烈な破壊力を秘める末脚。東京・芝2000mのデビュー戦では上がり33秒1という破格の時計をマークし、手綱をとった石橋脩騎手もレース後、「それにしても直線の脚はすごかった」と舌を巻いた。前出の専門紙記者も再び語る。 「デビュー戦の勝ちっぷりは、背筋がゾクッとしました。初陣の2歳馬が、古馬にもなかなか出せないような上がりタイムを打ち出して勝つんですから。この段階で、この馬の末脚は早くもGI級。やがてGI馬になる逸材だと確信しました」 2戦目の共同通信杯ものちのGI馬、皐月賞を勝ったジオグリフとGINHKマイルCを制したダノンスコーピオンが出走。今にして思えば、かなりハイレベルの一戦だったが、ダノンベルーガはこれら難敵を一蹴している。 この2戦のパフォーマンスで、ダノンベルーガのポテンシャルは世代最上位であることは証明されている。 ただ、周囲の評価はそこまで高くはなかった。皐月賞も2番人気とはいえ、単勝オッズは5倍にとどまった。 その一因はデビュー前、同馬が育成牧場で競走生命を危ぶまれるような大ケガ(右後肢)を負っていたからだ。さらに、それはいまだ完治しておらず、デビュー2戦で左回りの東京競馬場を使ったのも、そのケガをした右後肢に負担がかからないためと言われ、右回りの皐月賞出走に関してすぐにゴーサインが出なかったのも、この古傷を考慮してものとされた。 そうした報道を受けて、ファンが懸念。絶対的な信頼を得られなかったのも頷ける。