24年度補正予算案 「額ありき」でまた拡大 成長戦略の影響大きく
政府が29日閣議決定した2024年度補正予算案の一般会計歳出は13兆9433億円となり、23年度の補正予算の規模(13兆1992億円)を上回った。物価高対策は以前より規模を縮小した事業もあるが、緊急性に乏しい産業政策などが膨らんだためだ。財源の5割を国債発行でまかなうなど、借金頼みの構造も続いている。 【グラフで見る】内閣支持率、どう推移? 補正予算のうち、国民生活に直結する物価高対策では、低所得世帯向け給付金の額は3万円(子育て世帯は子ども1人当たり2万円加算)で、23年度の7万円より縮小した。電気・ガス代の補助額も減っている。財務省幹部は「額ありきではなく、物価上昇に追いつけない分を踏まえて設定した」と指摘する。10月の衆院選で現役世代の給与などを増やすことを主張する国民民主党が躍進したこともあり、「政治的にも『給付』はもうトレンドではない」(関係者)とみられていることも影響したようだ。 補正予算の総額が膨らんだのは、1月に発生した能登半島地震を受け、自然災害からの復旧・復興費(6677億円)や、旧優生保護法下で不妊手術を受けた障害者らへの補償金支給(878億円)が盛り込まれた面もある。だが、国内投資促進など成長戦略の影響も大きそうだ。 半導体や人工知能(AI)分野への支援として約1・3兆円を計上したが、このうち先端半導体の量産を目指すラピダス支援を念頭に置いた基金向けが約1兆円を占める。また創薬支援策なども盛り込まれているが、企業にとってはいずれも中長期的な投資計画と関係するだけに、市場関係者からは「非常時に編成する予算ではなく、当初予算で計上すべきではないか」との声も出ている。 今回の補正予算は22日に決定した経済対策を裏付けるが、結局、石破茂首相が衆院選で経済対策規模の前年超えを表明したことで、対策の中身よりも「額ありき」で議論が進んだ影響が大きそうだ。野党内でもこれを問題視して、減額を求める声もあり、今後の国会論戦でも予算の中身が厳しく問われることになりそうだ。【加藤美穂子、福富智、町野幸】