銀行の決済業務に大きな変革の波
全銀システムへの参加を決済業者(フィンテック企業)に認める
日本の銀行の決済業務に、大きな変革の波が押し寄せている。全国銀行協会は1月14日に、ほぼすべての銀行や信用金庫、信用組合が参加する資金決済システムである全銀システム(全国銀行データ通信システム)を、2022年度中に金融機関でないフィンテック企業にも開放する考えを示した。他方、3メガバンクやりそな銀行などは、少額決済専用のインフラ「ことら」を新設し、2022年度早期の稼働を目指すとしている。それ以外にも全国銀行協会は、全銀システムの手数料の見直しの検討を進めている。 政府が2020年7月に閣議決定した「成長戦略実行計画」では、全銀システムについて、「銀行間手数料の引き下げ」、「多頻度小口決済を想定した新資金決済システムの構築」、「キャッシュレス決済事業者などによる全銀システムへの参加」、の3つの改革案が示された。それに先立つ2020年4月には、公正取引委員会が、全銀システムの閉鎖性や高止まりする銀行間手数料を問題視する報告書を発表していた。全銀システムのフィンテック企業への開放などの対応は、こうした政府からの働きかけに応えたものだ。 全銀システムにアクセスできるようになる代わりに、決済業者には条件も課せられる。全銀システムに直接参加するためには、決済の不履行を防ぐために一定の担保を差し入れることが求められる。さらに、日本銀行に当座預金を開設することも求められるとみられる。その場合には、日本銀行の考査を受け入れ、銀行並みの安定した財務基盤やリスク管理体制が求められる可能性もあるだろう。条件の厳格さによっては、全銀システムに直接参加することを見送る決済業者も少なからず出てくるだろう。 フィンテック企業が全銀システムに直接アクセスできるようになれば、銀行に支払う手数料が減り、その分、スマートフォン決済で店舗から受け取る手数料の引き下げ等につながる可能性が考えられる。
全銀システムの手数料制度も見直しへ
さらに、全国銀行協会が検討を続けているとみられる全銀システムの手数料の見直しによって手数料が引き下げられれば、個人の送金手数料の低下につながる可能性もあるだろう。 銀行が別の銀行に送金する際に支払う手数料は、送金額が3万円未満では117円、3万円以上なら162円で事実上固定されており、それが利用者の支払う振込手数料に転嫁されている。個別交渉で決まるとされていたこの手数料が、40年以上固定されているのである。 既存の全銀システムは、送金を受ける側の銀行が手数料を受け取る仕組みだ。送金を受ける側の銀行が、必要になる人件費やシステム経費を算定した上で、それを送金側の銀行から運営費として徴収する仕組みが想定されている。その結果、新たな手数料の総額は現状よりも一定程度低下すると見られる。現在は無料の公金や給料の送金が、有料化される可能性がある。 現状では、大手行から地域金融機関への手数料支払いが大幅に超過している状況だ。新たな手数料制度が導入されれば、地域金融機関の手数料収入は減少するだろう。