天の川銀河中心のブラックホール撮影に成功、存在を実証 国立天文台など
私たちの住む天の川銀河の中心にあるとされてきた巨大ブラックホールの撮影に成功し、存在を実証した、と国立天文台などの国際研究グループが発表した。ブラックホールは強い重力で光をも飲み込むが、世界各地の電波望遠鏡を連携させ高性能を得る技術を活用。2019年に発表した別の銀河のものに続き、2例目の撮影となった。輝くガスのリングに縁取られた漆黒の穴が姿を見せた。
直径約10万光年に及ぶ天の川銀河の中心は、地球から見るといて座の方角にあり、強い電波やエックス線を放つ「いて座Aスター」が観測されていた。これが大質量の小さな天体であり、ブラックホールとみられることを示した2人の研究者が2020年にノーベル物理学賞を受賞した。ただ、撮影できておらずブラックホールであるとの確証はなかった。
そこで研究グループは、日本が主導する南米チリのアルマ望遠鏡など、世界6カ所にある計8つの電波望遠鏡を連携させ、仮想的に直径1万キロに匹敵する高性能の望遠鏡「イベント・ホライズン・テレスコープ(事象の地平面の望遠鏡)」を構築。2017年4月、いて座Aスターを観測した。5年間の解析作業を経て、輝くガスのリング状の構造と、その中の光を放たず暗い領域の画像が得られた。この暗い領域がブラックホールの本体で、いて座Aスターの正体を視覚的に実証した。
質量は、周囲の星の運動から求められていた値と同じ、太陽の約400万倍と判明。直径は6000万キロほどで、アインシュタインの一般相対性理論から予測された値と一致した。
研究グループは同じ2017年に、地球から5500万光年離れたおとめ座のM87銀河の中心にある巨大ブラックホールも撮影しており、先に解析して2019年に発表した。M87のものは太陽の約65億倍と巨大ブラックホールとして最大級である一方、いて座Aスターは最小級。2回の成果で、最大級と最小級の巨大ブラックホールの存在を示した形だ。いずれもブラックホールに飲み込まれるガスがリング状に輝いており、相対性理論の予言通りとなった。大きさはM87のものが1600倍大きいが、地球からの距離が2100倍遠いため、見かけ上の大きさは同程度という。