言い訳の仕方で分かる「やる気がある部下」と「成長しない部下」の見分けかた
このような人物の特徴は、ミスをしたり、ノルマを達成できなかったりしたとき、その原因を自分以外の要因のせいにするところにある。そこで問題になるのが、専門的な言い方をすれば、原因帰属のスタイルである。 ● 「失敗は自分のせい」と考える内的統制型と 「他人が悪い」と考える外的統制型 仕事でも勉強でもスポーツでも、成功や失敗の原因を何に求めるか、つまり原因帰属の仕方には、人によってクセがある。 心理学者ロッターは、ローカス・オブ・コントロール(統制の位置)という概念を提起している。自分の行動の結果(たとえば、成績の良し悪し、成功・失敗など)をコントロールしている要因が、自分の内側にあるか外側にあるかということである。そう言われてもピンと来ないという人が多いかもしれないので、簡単にいうと「成功や失敗の原因を自分のせいにするか、自分以外の要因のせいにするか」ということである。 原因帰属のスタイルには、自分の能力ややり方のせいにする「内的統制型」と、他人や状況や運といった自分以外の要因のせいにする「外的統制型」がある。このような原因帰属のスタイルは、個人の中でかなりの一貫性がある。 何かにつけて自分の能力や取り組む姿勢、あるいは努力のせいにしがちな人は、言ってみれば自分自身のせいにするので、内的統制型ということになる。 一方、たとえば顧客とトラブルになっても、自分の落ち度を認めずに相手のせいにしたり、成果を出せなかったときに状況や運のせいにしがちな人は、外的統制型ということになる。 そして、外的統制型の人よりも内的統制型の人の方がモチベーションが高く、勉強でもスポーツでも仕事でも成績が良いことが、多くの心理学の研究によって証明されている。
● どんな言い訳をするかで、 部下のモチベーションが分かる 内的統制型の人物は、「物事の成否を決めるのは、自分自身の能力や取り組み方だ」とみなす思考習慣が身についている。すなわち、自分が能力を十分に発揮できれば良い結果が出るはずだ、一所懸命に頑張ればきっと良い結果がついてくるはずだと考え、うまくいかないときも、十分に力が発揮できていないからだ、やり方をもっと工夫すれば何とかなるのではないかなどと考えるため、高いモチベーションを維持することができる。そして、成功確率を高めるために、仕事に必要な知識を仕入れる勉強をしたり、幅広く情報収集をしたり、地頭を鍛えるため直接仕事に関係ない読書をしたりして、能力開発に励むことになる。 これに対して、外的統制型の人物は、「物事の成否を決めるのは状況や運や他人の力であって、自分にはどうすることもできない力が働いている」とみなす思考習慣を身につけている。そのためモチベーションは低く、能力開発もおろそかになりがちになる。自分の頑張り次第で成功への道を切り拓いていけるといった発想がなく、思うような成果が出ないとすぐに諦めてしまうクセがある。 それゆえに、どのような言い訳が多いかでモチベーションが高い人物かどうかを見分けることができる。 思うような成果が出ないとき、不景気だからとか、ライバル社の攻勢が凄まじかったとか、相手方の担当者との相性が悪かったなど、外的要因を持ち出して言い訳する人物は、概してモチベーションが低いとみなしていい。一方、やり方を間違えたとか準備不足だったというように内的要因を持ち出して言い訳をする人物は、モチベーションが高いとみなすことができる。
榎本博明