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大鶴義丹、愛する立ち飲み屋で語る「父・唐十郎へのライバル心」

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 暖簾をくぐると、人懐っこい笑顔が待っていた。まさに常連客の風格で、約束していた店の開店時間より早めに来ていた大鶴義丹(52)は、長身を軽くかがめて会釈した。店の名は、「呑うてんき」。東京駅八重洲口近くの立ち飲み屋だ。 【写真あり】状況劇場の看板女優だった母・李麗仙にミルクを与えられる「大鶴義丹」 「うちの母、李麗仙の親友がやってる店なんです。親戚のおじさんの家に遊びに行く感覚で、しょっちゅう来ます。料理もけっこう凝っていて、究極のハムカツが売り。テレビでも紹介されたんですよ」  大鶴は早速、ハムカツや築地で仕入れるまぐろブツなど、いくつかを注文。まず生ビールで乾杯だ。 「お袋は病気になっちゃって今は無理だけど、前は一緒に、ここへ来ましたよ。というか、向こうが先に来て、常連さんと飲んでる(笑)。  店主の西山和夫さんは、元会社経営者。お袋とは、赤坂のスナックで常連同士だったんですよ。立ち飲み屋が好きで、20年前に自分でも始めちゃったの」  店の奥の壁には、客の残した写真が所狭しと貼られており、スナックの店内と思しき場所で、故・筑紫哲也さんらと微笑む李が写ったものもあった。大鶴と大鶴の妻、西山さんとの、仲むつまじいスリーショットも飾られている。 「立ち飲み屋というと、赤羽や北千住や大井町などディープなエリアに多くて、八重洲じゃ珍しい。一応、中央線の起点だしさ(笑)。中央線には、あまり立ち飲み屋がなくて、居酒屋文化なのかな。ここは客層もどこか上品で、実際エリートサラリーマンが多い」  大学在学中の1990年、小説『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞した大鶴。作家の顔を持つ彼には、街や食を、分析的に語る傾向がある。 「立ち飲み屋は、人と人の交差点って気がしますね。イギリスはどこにでもパブがあるけど、あれも立ち飲み屋。おっ、ご自慢のハムカツが来た。  揚げ物はどっち派ですか? うちの親父は上野の生まれでね、醤油派なんですよ。とりあえず、ソースと半々でいきましょか。サクサクでアチチ、ハフフ……。懐かしい味がするでしょ? ハムもこだわって探して、これに辿り着いたんですって」  優しい塩気のプレスハムが、軽めの衣に包まれ、キンキンに冷やしたジョッキに注がれた生ビールの、ドライな口当たりにすごく合う。まぐろブツも、中落ちと呼んでいいほど脂がのっていて、深い旨味のする上物だ--。  記者が感心していると、「まぐろが好物」という大鶴が、西山さんにツッコミを入れた。 「まぐろの量、いつもより多くない? 写真と違うって怒られても知らないよ。『FLASH』を読んで来たってお客には、サービスしてね」  2杯めの生ですでに上機嫌な大鶴。コロナ禍での自粛期間を、振り返り始めた。 「ともかく俺、働いてんのが好きなんですよ。だからバラエティでもVシネでも、お声がかかれば何でも出させてもらうけど、さすがに自粛期間は、ネットフリックスばっか見ちゃってましたね。 (毎年客演する)『新宿梁山泊』の公演も、俺は2020年は休み。俳優仲間には、ミュージカル出演で家を建てたやつもいるけど、舞台系はまだどうしようもない……」  大鶴は、劇作家・演出家で日本のアングラ演劇の旗手として「状況劇場」を主宰した唐十郎と、女優・李麗仙との間に生まれた。同劇団は李をはじめ、麿赤兒、根津甚八に不破万作、小林薫、佐野史郎、菅田俊、渡辺いっけいら、そうそうたる顔ぶれの役者を輩出した。 「麿さんは、あの風貌で下戸なんです。だから長生き(笑)。六平(直政)さんも、同じ劇団の出身者。どちらも血のつながっていない “叔父貴” みたいなもんです。家が劇団の稽古場だったし、本当にアクの強い人たちに囲まれて育ちました。  両親は執筆や稽古でかまってくれないから、劇団員が子守役。とくに小林さんには、映画に連れてってもらったりしてかわいがられたのに、『小林』って呼び捨てにしてましたからね(笑)」

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