「自宅では日本産米は食べません」東南アジアのコメ消費の現実、輸出戦略へ改めて考えるべきこと
「日本産米は品質が高く、海外で大人気」――。よく日本のメディアで取り上げられているが、本当だろうか? 【写真】コメ輸出先の〝現状〟 2024年、「令和のコメ不足」と言われるなど、店頭から一時コメが消え、24年度産の新米も高値が続いている。このような状況下で、コメの輸出を振興する論調に違和感を持っている読者も多いのではないだろうか。 日本のコメは海外でどのように消費されているのか?24年10月にマレーシアとタイを訪問したので、消費現場をレポートする。
多民族国家・マレーシアにおけるジャポニカ米
マレーシアに行くと、様々な人種が街を歩いており、多民族国家であることが分かる。首都・クアラルンプールの街には多様な料理店がある。 マレーシアの4大料理は、マレー系、インド系、中国系、マレー系と中国系が融合したニョニャ系に分かれていると言われている(マレーシア政府観光局ホームページ)。 特にマレー系の料理は、日本料理とは似ても似つかない、スパイシーでエスニックな味わいが特徴である。筆者も本物のマレーシア料理を食べるとたびたびその辛さに驚くことがある。 ショッピングモールなどでも手ごろな価格で美味しいマレーシア料理を楽しむことができる。一方、クアラルンプールの街中には、シンガポールやタイなどに比べると日本食レストランはさほど目立たない印象だ。
マレーシアは面積約33万平方キロメートルで、日本とほぼ同じ大きさ(外務省ホームページ)。約3350万人が暮らしている。民族はマレー系約70%、中華系約23%、インド系約7%と多民族で、その人口構成が食の多様性につながっている(ともに23年マレーシア統計局)。 言語は、マレー語(国語)、中国語、タミール語のほか、高等教育が英語で行われている。宗教は、イスラム教(連邦の宗教)64%、仏教19%、キリスト教9%、ヒンドゥー教6%、その他2%と多宗教(23年マレーシア統計局)で、街を歩くとイスラム教徒の女性が頭部を覆う「ヒジャブ」が目立つ。 なお、在留邦人数(外務省・海外在留邦人数調査統計)は、2万657人(23年)で、シンガポールの約3万人より1万人ほど少ない。 マレーシアの料理には、長粒種のインディカ米が使われている。ジャポニカ米と違い、パサパサとしており、粘りがない。数日滞在するとこの長粒種に慣れてくるから不思議である。マレーシアは10月上旬でも暑く、突然のスコールがあり、長粒種は、この蒸し暑い気候に合っているからかもしれない。この環境に日本産米は合うのだろうか、と感じてしまう。