「自宅では日本産米は食べません」東南アジアのコメ消費の現実、輸出戦略へ改めて考えるべきこと
日本通でも「家では食べない」
今回、生鮮食品売り場へは、コンビニエンスストアから大型スーパーマーケットまで数軒訪問した。カルフォルニア米や台湾産「コシヒカリ」、ベトナム産「あきたこまち」などのジャポニカ米らしきものはあったが、日本産米は筆者が訪れた店には置いてなかったようだ(UFM Tradingホームページ)。 なぜ、スーパーマーケットなどで日本産米を見かけなかったのか?マレーシア農業省の方々と食事をした際に、「自宅で日本産米を食べるか」と聞いてみると、「外食した時に日本食を食べるが、自宅では日本産米は調理しない」という返事だった。その中の一人は日本に研修で来た際に、複数の寿司店を訪ねたほどの日本通であるにもかかわらずだ。 約2万人の在留邦人がいるものの、小売店が市場の大きくない日本産米を優先しないのもうなずける。ただし、他国のジャポニカ米が現地のスーパーマーケット等に置いてあるのは、価格面などが影響してそうだ。
タイは日本食レストランが並ぶが
続いて訪問したのがタイである。タイ国民の主食は米である。タイ米は米麺に加工されたり、米粉として惣菜や菓子に使用されたりしている。 タイの人たちは外食が多く、首都バンコクを中心に、屋台が多い。家で食事をする場合も、女性の社会進出率が高いため、総菜は屋台で買うことが多いと言われている。 タイ料理のなかでも、東北部の代表料理である青パパイヤのスパイシーなサラダ「ソムタム」やタイ風やきとりの「サテ」などが有名である。また、海に接する南部は魚とフルーツが豊富で、スパイスを使った辛い料理が多い。 「パクチー」というハーブが使われるなど風味は日本料理とはかなり異なる。世界3大スープと言われるエビが入ったスープ「トムヤムクン」は食べたことがある方も多いと思う。 主食のタイ米は細長い、インディカ米が主流で日本のお米よりねばり気が少ない。北部や東北部ではもち米が食べられている。また、タイにはジャスミン米という最高級米がある(農水省ホームページ)。 タイの面積は51万4000平方キロメートルと日本の約1.4倍で人口6609万人(22年、タイ内務省)。在留邦人数は、7万2308人(23年10月)である。 今回の訪問で足を運んだタイのスーパーマーケットでも、邦人ご用達の「フジスーパー」や「ドンキードンキー」など以外は、日本産米をほとんど見かけなかった。 タイ農業協同省の職員複数にも自宅で日本産米は食べるかを聞いてみた。やはり、「自宅では調理しない」との返事だった。これも、タイの食習慣からは容易に想像のつく回答だった。 一方、バンコクの街を歩くと、日本食レストランが目立ち、現地の方らしき人たちで賑わっている。確かに日本食ブームは起きていることを実感する。 その中の一軒でカツ定食を食べてみた。デザート、コーヒー付きで1200円と手ごろな価格。米はタイチェンライ産とのことだが、ジャポニカ米だった。若干パサつき感はあったが、おいしく食べられた。