【年金】反映されていない記録を申告すると「受給額が下がってしまう」ケース
学校卒業後にある企業で働いていた期間があり、年金記録に反映されているか疑念を抱いて調べたところ、反映されていないことが分かりました。 その場合には、年金額も増えることから当然申し出をすべきでしょう。 しかし、場合によっては申し出をしない方が年金額は高いということが起こります。どのような場合なのでしょうか。
遺族厚生年金
現在の遺族厚生年金の計算式は次のとおりです。 死亡した方の平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 被保険者期間の月数 × 3/4 注目すべきは「被保険者期間の月数」です。 遺族厚生年金は ・ 短期要件 ・ 長期要件 と、2種類の計算方式があります(短期要件にも長期要件にも該当した場合には、原則として短期要件を採用)。 下記の(ア)~(ウ)が短期要件で、(エ)が長期要件です。 (ア)被保険者が、死亡したとき (イ)被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であった間に初診日のある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとき (ウ)障害等級の1級または2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が死亡したとき (エ)老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき ■月数が300に満たない場合には「みなし300」で計算 そして、次の部分が重要で、短期要件の場合、年金額計算の基礎となる被保険者期間の月数が300に満たない場合には300(いわゆるみなし300)として計算した額とします。 遺族厚生年金は原則65歳から受給開始となる老齢厚生年金とは異なり、ご主人が他界されて比較的若い時期であっても受給開始となる場合がありそのような措置がとられているものと考えられます。 たとえば、短期要件の遺族厚生年金として実際の被保険者期間の月数が100月である場合には、「みなし300」により被保険者期間の月数は300月とみなされます。 そこに、死亡した方の若年期の分として12月分の被保険者期間が発掘された場合、12月分を加算したとしても300月には達しないために、みなし300月の中に含まれてしまいます。 若年期の給与が低い場合にはその期間も含めて「平均」標準報酬額として計算します。 すると、「みなし300」により月数は変わらないにも拘らず「平均」標準報酬額は下がりますので、結果的に遺族厚生年金の額も下がってしまうということです。 その場合、高い遺族厚生年金を受給していたことから5年の時効を遡り5年分を返還しなければならないということになります。 しかし、現在では、 発掘された記録を合算することにより年金額が下がってしまう場合は「再計算は希望しない」との選択が可能 となっています。 ゆえに5年分の返還も発生しないということです。