国内外の通信分析を 能動的サイバー防御で有識者会議提言 通常国会に法案提出へ
政府は29日、サイバー攻撃に先手を打って被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」に関する有識者会議(座長・佐々江賢一郎元駐米大使)の第4回会合を首相官邸で開き、法制化に向けた提言を取りまとめた。新たな制度を創設し、政府が国外を中心とした通信情報を収集・分析する必要があると結論付けた。政府は来年の通常国会への法案提出を目指す。 石破茂首相は会議で「サイバー対応能力の向上は、現在の安全保障環境にかんがみると、ますます急を要する課題だ」と述べ、早期に関連法案を準備するよう平将明サイバー安全保障担当相に指示した。 政府による通信情報の利用は、憲法21条が規定する「通信の秘密」との整合性が課題となるが、提言では「通信の秘密であっても法律により公共の福祉のために必要かつ合理的な制限を受ける」とした。一方で情報収集の在り方が適切かどうか独立機関による監督の重要性を強調した。 サイバー攻撃の多くが国外から行われることから、日本国内を経由する国外間の通信に加え、国外から国内、国内から国外への通信も分析する必要性を指摘した。メールの内容など個人情報は分析の必要があるとはいえないとした。 攻撃元サーバーへの侵入や無害化措置は、まずは警察が行い、「公共の秩序維持の観点から特に必要のある場合」には自衛隊が加わるべきと整理した。侵入・無害化の対象は重要インフラや自衛隊施設などへの攻撃に重点を置くべきだとした。 経済安全保障推進法で定める基幹インフラ事業者には、政府への被害報告を義務化し、保有機器情報の届け出を求めるよう促した。官民による情報共有の仕組みを整えるべきだと訴えた。