「黒い雨」新基準めぐり岡山地裁に提訴 被爆者認定求め、80代女性
広島で原爆投下後に降った「黒い雨」を浴びた人の救済対象を広げた新基準に基づき被爆者健康手帳の交付を岡山県に申請して却下された岡山市内の女性(83)が29日、岡山県を相手取り、処分取り消しなどを求める訴訟を岡山地裁に起こした。同様の訴訟は広島地裁で係争中で、代理人の弁護士によると、広島以外での提訴は初めてという。 【写真】提訴後、会見する弁護士や支援者=2024年11月29日午前11時30分、岡山市北区、北村浩貴撮影 黒い雨をめぐっては、広島高裁が2021年、雨が降ったとされる地域をより広範に認め、原告を幅広く救済する判決を出した。国は上告を断念し、黒い雨に遭ったと確認できる▽11類型の病気のどれかにかかっているか白内障の手術歴がある、の二つの要件を満たせば、被爆者と認定する新たな基準を設け、22年4月から適用している。 訴状などによると、女性は1945年8月6日当時は4歳で、広島県津田町(現・廿日市市)に住んでいた。母親と墓掃除に行った帰りに黒い雨を浴び、着ていたピンク色の服が真っ黒になった記憶があるという。その場所は、広島高裁判決で原告が認められた雨域から西に約3キロ離れた地点だった。 女性は今年3月、岡山県に手帳の交付を申請した。要件の一つに該当する、肝臓機能障害を伴う病気があるものの、「当時いた場所に黒い雨が降ったことが確認できない」などとして却下されたという。 訴状では、広島高裁判決で原告が黒い雨に遭ったと認められた雨域をめぐり、その範囲外であるからといって黒い雨が降らなかったとするのは相当ではないと同判決が言及した点を指摘。さらに、黒い雨の発生という極めて特異な出来事が続いた記憶は、鮮烈に脳裏に焼き付けられていると考えるのが自然かつ合理的とも言及した点も挙げた。女性の説明には信用性があり、女性がいた場所にも黒い雨が降った蓋然(がいぜん)性があると主張している。 また、新基準について、黒い雨に遭った人たちにだけ、病気の発症を要件に加えているのは不合理で差別的だと主張。黒い雨に遭ったと確認できるだけで、被爆者と認められるべきだなどと訴えている。 県によると、新基準の適用開始以降、29日現在で、25人が手帳の交付を申請し、うち22人が認められ、残る3人は審査中や却下だという。 県は「訴状が届いていないためコメントは差し控える」としている。(北村浩貴)
朝日新聞社