「桜を見る会」問題が再燃 安倍前首相の国会答弁を振り返る 坂東太郎のよく分かる時事用語
(2)政治資金収支報告書記載の有無
「夕食会に関して安倍晋三後援会としての収入、支出は一切ないことから、政治資金収支報告書への記載は必要ないものと認識しております」(2019年11月20日参議院本会議)。 →(答弁での主張)契約は参加者とホテルの間で結ばれていて安倍後援会に金の出入り自体が存在しないから収支報告書に書く内容もなく不要である。
(3)明細書の有無
「私の事務所に確認を行った結果、ホテル側との相談過程においてホテル側から明細書等の発行はなく、加えて、ホテル側としては営業の秘密に関わることから公開を前提とした資料提供には応じかねることであったと報告を受けております」(2019年12月2日参議院本会議) 「私の事務所の職員はホテル側と事前に段取りの調整を行ったのみであり、明細書等の発行は受けていないとのことでありました」(2020年2月17日衆議院予算委員会) 「(明細書について)事務所においては保存をしていないし、事務所は受け取ったということを記憶をしていないということでございます」(2020年3月4日参議院予算委員会) →(答弁での主張)安倍氏が事務所に確認したところ(=間接話法)、ホテル側から明細書などの発行はなかったとのことであった。保存もしていない。
(4)安倍事務所が差額を補てんしたか否か
「収入、支出が発生していないということで、これは記載をしていないということでございます。また、事務所側がこれに補てんをしたという事実も全くない」(2020年3月4日参議院予算委員会) →(答弁での主張)安倍事務所が差額などを補てんした事実は全くない。
報道内容との「食い違い」
現在報道されている主な内容は次の通りです。 戦端を切った読売新聞の報道は、上記の(4)を大きく覆します。東京地検特捜部が、首相も前夜祭(首相答弁における「夕食会」と同じ)の「主催」と認めている後援会の代表も兼ねる公設第1秘書らから任意で事情聴取をしており、会場となったホテル側に支払われた総額が参加者からの会費の総額を上回っていて、差額分を安倍氏側が補てんしていた可能性が浮上したと伝えました。さらにホテル側から明細書などを提出させて分析を進めているとも。 以後も読売報道は他を先駆けます。翌日11月24日には「関係者の話」として「ホテル側は、安倍氏側から差額を受領したことを示す領収書を作成し、安倍氏側に渡していたといい、特捜部も領収書の存在を把握」と(3)の「明細書等の発行は受けていない」を否定。 25日には「関係者」情報としてホテル側は参加者の会費(1人5000円)で不足した分の請求書を提示し、支払い後に「安倍氏が代表を務める資金管理団体『晋和会』宛てに領収書を発行していた」と報道しました。(1)で「集金しただけ」のはずの「安倍事務所」と「資金管理団体」の住所は同一です。また特捜部の「少なくとも2015年以降の開催分について、安倍氏側が領収書などを廃棄していた可能性が高い」という見立ても紹介しました。「領収書など」が存在しなければ「廃棄」もできないわけで、前日記事の続報ともいえましょう。 また毎日新聞は24日、「関係者」情報として地検が「ホテル側が作成した前夜祭の費用の明細書を入手」したと(3)で議論となった明細書があったと指摘しました。 報道が事実であれば(1)(3)(4)の主張はすべて崩壊。そうなると(2)で答弁した「記載は必要ない」という主張の前提を失います。そもそも補てんの有無などを特捜が調べるのは政治資金規正法違反(不記載)の疑いがあるからです。