「先日の言葉は本心ではなかったのか」本田圭佑の電撃退団報道にブラジル人記者が苦言。サポーターからも嘆きの声が殺到【現地発】
契約は2月まで。早期退団する理由は?
12月28日、ボタフォゴはホームでコリンチャンスに0-2で敗れ、19位となった。1部残留の可能性は試合ごとに少なくなっている。これまでは「共にチームを救おう」などと言っていた最もお人よしの部類のサポーターでさえ、今はチームに怒りを覚えている。 【動画】退団報道の本田圭佑がブラジル全国選手権で決めた鮮やかなゴラッソはこちら エドゥアルド・バロッカ監督の言う「毎試合をワールドカップの決勝のような気持ちで戦っている」というのも、今ではむなしく響くだけだ。 ブラジルでは「悪いニュースは一人ではやってこない」というが、まさにその通りだ。 試合当日の夜、チームの二人の選手がリオのナイトクラブで遊んでいるのを目撃されて非難される(ブラジルは再びロックダウン状態に入っている)。しかし決定打は21時、ブラジルの『ラジオTUPI』で放送されたニュースだった。 「本田の代理人マルコス・レイテがボタフォゴの新幹部(来年の1月1日から交代)のところに話に行き、本田の契約解除を依頼したようだ」 パーソナリティのクラウディオ・トゥピはその理由を「家族の問題」と「ヨーロッパのチームからのオファーがある」からだとした。このニュースはその後『FOX』や『ESPN』でも取り上げられているので、どうやら信ぴょう性は高そうだ。 次のボタフォゴの試合は1月6日のアトレティコ・パラナエンセ戦だが、本田は今怪我をしており、あと15日から20日くらい治療にかかる。もしこのニュースが本当だとしたら、もうプレーするところをブラジルで見ることはないだろう。彼が最後に公の場に姿を現わしたのは3日前、難病の子供を助けるために自分のサイン入りのユニホームを寄付した時である。 とにかくこのニュースにボタフォゴのサポーターは今怒り心頭だ。ボタフォゴのオフィシャルサイトには「本田でていけ」「日本人の恥」「期待して損した」などのコメントが次々に寄せられている。 10月までに契約を2月までに延ばしたのは本田側からの申し出だった。また12月の頭に「僕はチームを離れない。この状況を変えるために最大の努力を尽くす」と言っていたのは本心ではなかったのか。 私はがっかりしている。本田は何でもできたはずだった。大変な状況であるのはわかるが、それでも契約が終わる2月末まで、黙ってボタフォゴのために戦ってほしかった。それでこそ真のプロというものだ。そんな姿にブラジル人も拍手を送ったはずだ。 かつてイタリアのユベントスがセリエBに落ちた時、ジャンルイジ・ブッフォンはそのまま2部でプレーしたではないか。大変な状態のチームを見捨ててさっさと出て行ってしまう本田は、ボタフォゴに本当の愛着を持ったことは一度もなかったのだろう。 もしこの先、翻意して移籍を取りやめても、もう遅い。ブラジル人の心はすっかり本田から離れてしまった。 文●リカルド・セティオン 翻訳●利根川晶子 【著者プロフィール】 リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。