現在公開中の映画『フェアウェル』をD姐が紐解く。
女優、コメディエンヌ、脚本家やプロデューサーとしても活躍するライジングスター。
主演のオークワフィナは、まさにハリウッドのシンデレラだ。2018年6月に全米公開された『オーシャンズ8』でサンドラ・ブロックやアン・ハサウェイと共演し、オイシイところを全て持っていったかと思えば、同年8月公開の『クレイジー・リッチ!』は、予想外の大ヒットをするとともにまたもやオイシイところを独り占めした。『オーシャンズ8』で劇場用パンフレットのコラムを書いた時には、他の豪華キャストに比べてオークワフィナが無名過ぎて資料がなく苦労した記憶があるが、あっという間にスターダムを駆け上がった。 しかし、この『フェアウェル』も『オーシャンズ8』や『クレイジー・リッチ!』の大ヒットに伴うブレイクでキャスティングされたのかと思いきや、この2本がまだ公開される前に既に本作にキャスティングされていた。不器用でちょっとぎこちない(名前のAwkwafinaはawkward = ぎこちない、などをもじった造語)けれど、透明感のあるビリーのキャラクターにぴったりだ。
オークワフィナ自身は父親が中国系、母親が韓国系という2世アジア系アメリカ人で本名はノーラ・ラム。中国名は林家珍という寄席に出ていそうな名前だが、母親が4歳のときに病死しているため、父親と父方の祖父母に育てられ、特に祖母からの影響が大きかったという点でも、ビリー役には適任だった。彼女が脚本やプロデュースを手がけ、本人役で出演しているコメディ・シリーズ「Awkwafina Is Nora from Queens」では持ち前のちょっと下品なコメディエンヌとしての才能を発揮しているが、『フェアウェル』でシリアスな演技もできることを証明した。 この物語は、女性監督のルル・ワンの身の上に起こった実話でもある。このストーリーを2016年に過去にピュリッツァー賞なども受賞しているラジオ番組「This American Life」でワン監督が紹介したところ、プロデューサーの聴くところとなり、映画化となった。現在37歳で6歳のときに北京から米国マイアミに移住した移民でもあるワン監督は、「2つの文化との間で、家族との関係と友人や同僚との関係はいつも分断されているように感じていた私の実体験」だという。