石破政権のエネルギー政策は「赤点」 再エネ推進で10年150兆円のコスト増〝賦課金〟維持で「官僚栄えて国民滅ぶ」
さすがに経済の崩壊が不安になったのか、「脱炭素に伴うコスト上昇は抑制」とするが、要は、「少々の光熱費上昇は我慢しろ」ということか。「国際的に遜色のない光熱費」と言うが、その国際的とはどこか。愚かなエネルギー政策で、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)までリストラが始まったドイツのことか。
■心ある政治家はグリーン利権から国民を守るべきだ
こんな曖昧な文言でなく、はっきりと、「東日本大震災前の2010年の水準に光熱費を戻す」と目標を設定すべきだ。心ある政治家はぜひこの目標を書きこみ、グリーン利権から国民を守るべきだ。原発を再稼働し、再エネ導入をやめれば、光熱費は下がる。
■まるで「トランプに当て付け」
以前よりは改善した部分も少しはある。
原発は「依存度の低減」から「最大限の活用」に代わった。また、実現不可能な細かな数字の積み上げが消えた。
だが、国全体のCO2として40年度の排出量を13年度比で73%減するとしている。この理由は、13年度から50年度に向かって直線を引いた、というものだ。これは実現不可能で、何の裏付けもない。これを目指すだけで経済は崩壊する。
石破政権は、この数値目標を、25年2月までにパリ気候協定に提出する構えだが、世界が見えているのだろうか。
米国共和党は、バイデン政権が進めた「脱炭素」は経済を損なうとして猛反対してきた。ドナルド・トランプ次期大統領は1月20日の就任初日にパリ協定を離脱することが確実だ。
石破首相は、自滅的で愚かなエネルギー政策を策定するのみならず、まるで「米国への当て付け」のようなタイミングで、出来もしない数値目標をパリ協定に公約するのか。これで、石破首相は、トランプ氏に相手にしてもらえるのだろうか。
■杉山大志(すぎやま・たいし) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。1969年、北海道生まれ。東京大学理学部物理学科卒、同大学院物理工学修士。電力中央研究所、国際応用システム解析研究所などを経て現職。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、産業構造審議会、省エネルギー基準部会、NEDO技術委員などのメンバーを務める。産経新聞「正論」欄執筆メンバー。著書・共著に『「脱炭素」は嘘だらけ』(産経新聞出版)、『亡国のエコ』(ワニブックス)、『SDGsエコバブルの終焉』(宝島社新書)など。