「空想している時間は“脳汁”が出ます」―― レイトン、妖怪ウォッチの作者・日野晃博の創造性
キャラという回路をつくりこむ
「妖怪ウォッチ」は、2012年末に子ども向けのマンガ雑誌で連載がはじまり、半年後の13年7月にゲームが発売された。14年1月にはテレビアニメ、関連玩具、音楽と多様なメディアが展開され、爆発的なヒットとなった。これは日野さんが緻密に立てた戦略だった。 ──出版社にマンガ連載の企画を持ち込んだ際は、「妖怪はヒットの実績がない」と言われたそうですね。 はい。ただ、そういう予測って、実際に世に出してみるまで分からないと思いますね。僕が考えていたのは、やはり子どもが欲しくなるためのお膳立てのプロセスでした。5000円近いゲームソフトを子どもが簡単に買えるわけではありません。誕生日とかクリスマスに初めて買ってもらえる。そのときに絶対欲しいと言ってもらうには、そのコンテンツにつねに触れていて、無料の段階で好きになっていることが必要。つまり、テレビで毎週放送されていて、たまに買うマンガにも載っている状態です。それらを考えて、出版社に交渉に行ったんです。 ──実際のヒットの流れを見ると、まさにそんな戦略が見事に効いたように見えます。 でも、やはり大事なのはキャラクターです。キャラクターは大事な回路なんです。
──回路とはどういうことでしょう。 車にはエンジンやハンドル、シート、ブレーキなどがありますよね。ゲームやアニメも物語を前に進めるためのキャラクターが必要なんです。笑わせるキャラ、せつないキャラ、かっこいいキャラ。そういうのが10人くらいいて話が回る。 だから、「妖怪ウォッチ」ではジャイアンキャラ、スネ夫キャラなど藤子不二雄作品で培われたキャラの組み合わせも参考にしました。ただ、主人公はのび太ほど落ちこぼれにはしなかった。ふつうの成績の特徴のない子。それが現代の子だろうなと。 ──そこが多くの子どもに共感された。 そうですね。物語をつくる前には小学生の悩みとかもかなりリサーチしました。 ──結果的に爆発的なヒットになったわけですが、経営もある種ゲーム的な感覚なのでしょうか。 いや、経営は本当に分からないというか……、経営自体にはおもしろみを感じているわけではないですね。やはり楽しいのは、ものをつくっているときです。