JR東日本「風通しがいい」新型ホームドアは何が違うか 南武線で導入開始、設置加速の切り札になる?
都市部の鉄道では、ホームからの転落事故防止に大きな効果のあるホームドアの整備が進んでいる。東京都心部では都営地下鉄が全駅に設置を完了したほか、東京メトロもかなりの路線で進んでいる。 【写真を見る】従来型、スマートホームドア、そして「スリットフレームホームドア」、それぞれどんな形? JR東日本は、2031年度末ころまでに東京圏の在来線主要路線の330駅758番線にホームドアを整備するとの目標を掲げている。2023年度末までに山手線、京浜東北・根岸線を中心に、117駅233番線(線区単位。同じ駅でも路線が違う場合2駅とカウント)にてホームドアの整備を完了した。2024年度は26駅55番線に整備する予定で、すでに設置済みの駅もある。
■従来型や「スマート」に続き新型登場 そんな中、JR東日本は新型のホームドア「スリットフレームホームドア」を2024年度下期から導入開始し、同年度内に南武線の分倍河原駅と登戸駅(2番線)に設置すると今年8月に発表した。分倍河原駅では、駅の掲示によると12月21日使用開始の予定だ。 これまで同社は2種類のホームドアを設置してきた。「従来型のホームドア」と「スマートホームドア」である。 【写真】従来型、スマートホームドア、そして「スリットフレームホームドア」、それぞれどんな形?
従来型は山手線や京浜東北線などでよく見かける、戸袋や扉が壁状になったタイプで、「ホームドア」といわれて多くの人がイメージするのはこの形であろう。だが、従来型は重量が約400kgと重く、設置にコストがかかるという課題がある。 そこで開発されたのが「スマートホームドア」である。ドア形状はフレーム構造となっており、重量は約195kgと大幅に軽量化された。2016年に横浜線町田駅で試行導入し、2020年2月に京浜東北線蕨駅に本格導入されて以降各地で増えつつある。南武線で最近見かけることが多いホームドアはこのタイプである。
では「スリットフレームホームドア」とはどのようなものなのか。スリットフレームという名の通り、戸袋や扉の部分にスリットがあるのが見た目の特徴だ。 従来型のホームドアはそれ自体が重いというだけでなく、列車の風圧を受けやすいという課題がある。そこで、扉や戸袋を風が抜ける構造にしたホームドアを考案し、2021年11月から12月にかけて南武線登戸駅で実証実験を行った。 ■「スリット」で風圧の影響軽減 その結果生まれたのがスリットフレームホームドアだ。従来型のホームドアと同様の形状で安全性を維持したうえで、扉や戸袋をスリット化して風が抜けるようにし、ホームやホームドア支持部の風圧による影響を従来型と比べて約40%軽減した。これによって、ホームの補強など設置工事の簡素化が期待できるという。