荒木香織(スポーツ心理学者)「メンタルは鍛えられるんです」
「日本はあまりにも遅れ過ぎています」
日本のスポーツ界では昭和の「根性論」も根強い。「死ぬ気で行く」「意地を見せる」といった使い古されたフレーズにも荒木ははっきりと否定的だ。 「まだそんな根性論でやっているのかと思ってしまいます。スポーツ医学や、心理学、栄養学などスポーツ科学が世界的に進化している中で、日本はあまりにも遅れ過ぎています」 メンタルが弱い、ということを指摘する指導者が多いが、これもあまりにも抽象的だ。 「メンタルは強い・弱いではなく、『自分が成し遂げたい』と思うことに向かい、乗り越えるというよりは、うまく挑戦し続けることができるか。そこが大事なのです。充実感や満足感など、自分自身が『いろいろなことを達成できているなあ』という感覚を得ながら過ごしていけるかどうか、だと思います。メンタルは鍛えられるんです」 気持ちが優しいとされる若い世代の選手を積極的に起用しているエディー・ジャパンが「勝利のメンタル」をどう継承するのか。荒木の手腕に大いに期待したい。 Fight Song オーヴァージョイド/スティーヴィー・ワンダー 歌詞が好きでよく聴いています。思考や気持ちをコントロールするのは難しいですが、音楽を聴くとスイッチを切り替えやすいんです。また、スペイン語の曲を聴くことが多いです。英語だと意味が理解できてしまいますが、スペイン語は半分わからないところがいいんですよね。
KAORI ARAKI Ph.D.、スポーツ心理学者。株式会社CORAZONチーフコンサルタント、順天堂大学スポーツ健康科学部客員教授。スポーツや健康に関する心理学を専門とし、アスリート、アーティスト、ビジネスパーソンなどのメンタルトレーニングを行う。ラグビー男子日本代表(2024年~)のメンタルコーチを務める。 PHOTOGRAPH BY KUNIHIRO FUKUMORI WORDS BY YUKIKO UMETSU