海外勢多数のスーパーフォーミュラ鈴鹿テストを“レベルアップの場”と捉えるトヨタGR。2025年体制構築は「簡単な話ではない」と加地部長
鈴鹿サーキットで12月13日まで行われているスーパーフォーミュラの公式/ルーキーテスト。ルーキーのみ出走可能な3日目だけでなく、1・2日目から各陣営は2024年レギュラー以外のドライバーを積極的に起用したが、とりわけトヨタエンジン使用チームでは、その傾向が顕著だった。 【写真】スーパーフォーミュラ公式テスト/ルーキーテストに出走した小山美姫(Kids com Team KCMG) KONDO RACINGではジェームズ・へドリー、FIA F2経験のあるファン・マヌエル・コレアとザク・オサリバンが走行し、Kids com Team KCMGでは野中誠太、小山美姫、そして来季ハースからのF1参戦が確定しているオリバー・ベアマンが出走、さらに小林利徠斗(VANTELIN TEAM TOM’S)や堤優威(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)ら、多くのSF初走行ドライバーもエントリーリストに名を連ねた。加えて、体調不良がなければ、メルセデス育成で来季のF1フル参戦も決まっているアンドレア・キミ・アントネッリも、鈴鹿でスーパーフォーミュラマシンを走らせる予定だった。 これら鈴鹿テストでのドライバー起用について、トヨタGAZOO Racingの加地雅哉モータースポーツ担当部長/技術室長は、「各チームが調整したドライバーもいますが、TGRでサポートさせてもらった選手もいます。TGRの方が多いですかね」と、TGRが主軸となって起用が決定したドライバーが多いことを明らかにした。 「メリットはいくつもあって、まずはSFがこうやって注目されて盛り上がっていくことで、(既存の)ドライバーやチームの刺激になりますし、レベルは絶対的に上がっていくと思います」と加地部長。 「チームにとってはいろいろなドライバーが乗ることで、クルマの良い点・悪い点が確認できますし、国内の業界の活性化やレベルアップにつながると思います。また、こういったテストでは、新しい刺激が外から入ってきて、若いドライバーの刺激になることが望ましいと思います。今年はその狙いがある程度達成できているのかなという感覚です」 残念ながら来日が叶わなかったアントネッリについては、来る2025年のF1フル参戦に向けて鈴鹿のコース習熟を主な目的としていたことが明らかにされているが、ベアマンに関しても同様の意図が色濃いものと思われ、この両者に関しては所属チーム側からの希望でSFテスト参加が実現した模様だ。 マクラーレンやハースF1との提携を通じ、加地部長や中嶋一貴TGR-E(ヨーロッパ)副会長がF1(F2)の現場に足を運ぶ機会が増えたことも、今回のテストでのドライバー起用につながっているようだ。 「コミュニケーション・パスが広がった、というのがすごく大きいと思います。それは一貴も自分もそうですが、やはり現場でいろいろな人とコミュニケーションするなかで、『じゃあ、次はこうしてみよう・ああしてみよう』という話はお互いにできますので。ハースとの提携も、平川(亮)選手のマクラーレンもそうですが、そういった点での広がりにつながっていますね。それもひとえにモリゾウさん(豊田章男トヨタ自動車会長)が目指してきている世界だと思うので、感謝とともに、それを実現していきたいという気持ちです」 「(海外のレースの世界との)接点はすごく増えていますし、彼らも日本に対する興味をしっかりと持っていただいています。鈴鹿はF1日本グランプリの舞台でもあるので、いろいろな意味で注目されていることは、しっかりと感じています」 ■2025年SFは台数増のウワサも そのスーパーフォーミュラでは、12月11日にホンダが2025年の参戦体制を発表した。TGM Grand Prixの2台の名が記載されておらず、ホンダエンジン搭載車両の台数が減少する可能性が浮上するなか、反対にトヨタエンジン搭載勢の台数が増加するのでは、というパドックの噂もある。 これについて加地部長は「そんな噂があるんですか?」とかわしたが、改めて来季のスーパーフォーミュラ参戦体制構築の進捗について問うと「いろいろな準備をしています。まだまだ簡単な話ではないので……ちょっと今日はその件は、ごめんなさい」と話すにとどめた。 「年内にはなんとか(発表を)したく、準備を急いでいます。シーズンが終わったのに、まだ(ストーブリーグは)終わっていないと言いますか……忙しいです(苦笑)」というコメントからは、現在まさに最終調整が進められていることが想像できる。 加地部長によれば、今回の鈴鹿でのスーパーフォーミュラのテストが、オーディションを兼ねている部分もあるようだ。参戦台数、若手のステップアップ、そして海外からのエントリーなど、2025年のトヨタ勢の体制に対する興味は尽きない。 [オートスポーツweb 2024年12月13日]