歩車分離式の信号、自転車はどっち? 車用で進んだらクラクション鳴らされヒヤリ
学校の近くやスクランブル交差点などで採用されている「歩車分離式信号」。自転車が従うべきなのは車両用の信号か、それとも歩行者用の信号か―。ルールが分からず戸惑う声が、「こちら編集局です」のLINEを通じて広島市内の複数の読者から寄せられた。迷っている人が少なくないようだ。 歩車分離式交差点での自転車の信号ルール 投稿者の一人、広島市安佐南区の看護師女性(44)は、自宅そばの歩車分離式信号で悩むという。「自転車は車両、と考えて車両用信号に従ったら、車にクラクションを鳴らされてヒヤッとしたことがあったんです」 通行量が多い元安橋東詰(中区)のスクランブル交差点で観察してみた。車両用信号が青になると直進する自転車が少なくないが、左折する乗用車とぶつかりそうになる瞬間もあった。その間、歩行者用の信号は赤で、止まったままの自転車も多い。 何が正解なのか。交通ルールのプロに教わるべく、広島県警交通企画課を訪ねた。坂口健課長補佐が「道路交通法施行令 2条1項 信号の意味」を読みながら解説してくれた。 自転車は車両のため、車道を走るのが原則。そのため「車道を走る自転車は車両用信号に従わなければいけない」という。例外的に、歩道を走ってきた自転車は、横断歩道の歩行者用信号に従う。つまり「歩道か車道か、自分が走っている道の信号」に従えばいいということになる。 ただし、歩行者用信号に「歩行者・自転車専用」の標識がある交差点では、車道を走ってきても歩行者用信号に従わなければいけない。 さらに、坂口課長補佐が「ここも重要」と強調したルールがある。一つは道路交通法25条の「(自転車は)他の歩行者や車両を妨害する方法で横断、転回してはいけない」。もう一つは、国家公安委員会が教則で示す「(横断歩道では)歩行者の通行を妨げるおそれのない場合を除き、自転車に乗ったまま通行してはいけない」との規定だ。従うべき信号がたとえ青でも、周囲の安全に配慮して通行しなければならないということだ。 疑問を寄せた女性に取材結果を伝えると、「初めて理解できた」と喜んでくれた。同時に「自転車に乗る人と、車の運転手の双方がルールを理解しておかないと、ヒヤッとする状況はこれからも続くのでは」と案じた。 坂口課長補佐によると、自転車の走行ルールを巡っては、県警にも市民から質問が寄せられることがあるという。一人一人がルールを把握して安全運転を心がけるべきなのはもちろん、警察や行政による周知も欠かせないと思う。
歩車分離式信号とは
自動車の通行と歩行者の横断が交わらないように、青信号のタイミングを分離する信号機。2002年以降、全国で広がった。歩車分離式であれば防げた事故が過去2年間に2件以上あったり、通学路や公共施設付近で地元から要望があったりする場合に設置が検討される。警察庁などによると23年3月末現在、全国の信号機の4・9%を占め、広島県内には131基(3・2%)ある。