梅宮アンナ「日本でのがん治療は『標準治療』を選んでいい、その理由は?」医師に聞いてみたら答えは納得の
「いつか自分もがんにかかるかもしれない」1回でも真剣に考えてみればそれが「防災」になる
梅宮・あまりにも周囲にり患者がいたので、『いつか私も死んじゃうから』と思っていたかもしれません。逆に、51歳までよくがんにならなかったなと思うくらい。じつは20代の頃からどこかが痛いと『がんかも』と思っていました。いつでもリスクを感じていたので、がんだと診断されてもパニックにはならず冷静に治療の選択を進めることができたのだと思います。 押川・以前よく夜間救急の当直をしていたのですが、たとえば「今まで1回も病院にきたことがない」という人が我慢の限界を超えて運ばれてきて、実は進行大腸がんによる腸閉塞だと発覚、そのまま人工肛門になるというような例がありました。日本人の2人に1人はがんになる計算ですが、調子が悪くても病院にかかりたくない人をどうやって「早めの受診」につなげるか、非常に難しい場合があります。日本は保険制度が整っているので医療費の負担に気づきにくいのですが、がんは発見が遅れれば遅れるほど負担の大きい治療や後遺症で仕事に影響しますから、財産を失いやすいのです。ですから「がん防災」の概念は資産防衛にもなります。 梅宮・先生がYouTubeでおっしゃることにはひとつひとつうなずきました。たとえば「なにがお見舞いにいいか? お金です」という言葉には、その通り!と思いました(笑)。 押川・面と向かっては言えないけれど、みなさん内心では同じことを考えていて(笑)、よく挙がる言葉です。 梅宮・もうひとつ、この病気にかかったことで、このあとの人生で付き合う人、付き合わない人が明確になりました。いじわるな人とのお付き合いが無理、心が優しい人じゃないと付き合えない。ただ、「無理しないでください」「ゆっくりしてください」といういたわりも、私にとっては悪魔のささやきです。それはトレイルランしている最中に「無理しないでください」と声をかけられるようなもので、いまがんばらなくていつがんばるの!?と。 押川・がんになるとみんな隠しますよね。その結果がん患者への適切な声のかけかたを学ぶ機会がなく、どう言えばいいのかがわからないだけです。2人に1人がかかるのにみんな自分はかかる予定がないと思っていますから、がんの人との接し方がわからないし、そもそもいろいろな種類のがんがあることも知りません。お金のことだって僕が思いついたわけではなく、みんなが言っていることなんです。聞こえてこないだけで。 梅宮・私はAC(抗がん剤のドキソルビシンとサイクロフォスファミド)療法が2週間に1回の投与でした。『もし辛かったら3週間に戻しますが、そっちが普通だから落ち込まないでね』と言われました。投与中はいろいろなしんどさがありましたが、めそめそして自分で気持ちを下げてしまうと免疫も下がるような気がして、カラ元気でいました。 押川・可能ならば期間を短くして実施したほうが効果が上がります。高齢でも心臓が弱くてもできないのですが、おそらく梅宮さんは検査結果上、2週間でOKという判断を主治医がなさったのでしょう。メンタル面も大事ですし、副作用も「大丈夫」と自信のある人の方が出にくいように感じます。 梅宮・食べないと気持ちが負けそうで、ラーメンなんかおかわりしちゃって。治療開始から1か月で5㎏太りました。 押川・運動をしていた人は体力がありますし、体重もあったほうが、医療側も安心して抗がん剤の投与ができます。弱弱しい方ですと、やっぱりちょっと恐る恐るになります。 梅宮・私はもともと包み隠さない性格なので、自分の思ったことは全部口にしてしまいます。免疫療法を1回は受けた話を包み隠さず正直に主治医に話しました。そのとき、驚くことに褒められたんです。そんなの受けて!と怒られるのではなくて、『普通の人は隠すのですが梅宮さんはちゃんと言ってくれました』と。 押川・梅宮さんはうまくがん治療を商売とするワナを避けてすごいなと思います。実際、みなさん命がかかっていると感じて、いろいろな治療法やサプリを使いたくなるものです。でも、料理だって調味料をあれこれ入れすぎたらおいしくなくなりますし、治療に不純物が入ることにはリスクもあります。薬物性肝障害の原因のトップ5の中に健康食品が入っていることはあまり知られておりません。一部の成分だけ過剰に摂取するのもどうなのか。 梅宮・肝機能や腎機能を壊すこともありそうです。 押川・ビタミンAサプリメントも喫煙習慣のある人などにおいては逆に肺がんを増やすことがあると臨床試験でわかり、推奨されないとなっています。。原理的にはいいはずなのですが、実際の人間で試す臨床試験ではリスクを高める結果が出てしまいました。もうひとつ、プラセボ効果の『効果』はじつは半端ないのです。たとえば腰痛がある人に痛み止めと偽薬でテストを行うと、偽薬でも腰痛が取れます。これは偽薬ですよと言って飲ませても効きますので、人間の思い込みはバカになりません。そんなプラセボ効果にも勝てる効果が臨床試験で認められて、はじめて医薬品は承認されるのです。
お話/押川勝太郎先生 1965年宮崎県生まれ。宮崎善仁会病院・腫瘍内科非常勤医師。抗がん剤治療と緩和医療が専門、’95年宮崎大学医学部卒。国立がんセンター東病院研修医を経て、2002年より宮崎大学医学部附属病院にて消化器がん抗がん剤治療部門を立ち上げる。現在NPO法人宮崎がん共同勉強会理事長。2024年11月より一般社団法人日本癌治療学会公式YouTubeチャンネルを担当。 編集部より/このお話は24年9月16日に採話されました。ご病状等は当時のアンナさんの状態です。
オトナサローネ編集部 井一美穂