死という最後の舞台に三浦春馬さんは何を込めたのか 空羽ファティマ/海扉アラジン
死にたかったのではない 生きるためあらゆる努力をした
〔はじめに〕 以下に掲載するのは絵本作家・空羽(くう)ファティマさんの文章と、切り絵作家・海扉(かいと)アラジンさんの作品だ。8月末と9月6日にヤフーニュースに書いた三浦春馬さんについての記事に多くの反響があり、空羽さんもその一人として連絡してきた。ファティマは彼女のペンネームで、日本人の女性だ。彼女の文章には、これまでは熱狂的な三浦ファンではなかったのに、夜を徹して三浦さんのことを調べ続けたというまでのめりこんだ、彼女の心情が切実に描かれていた。 彼女と一緒に仕事している切り絵作家・海扉アラジンさんも、三浦さんをイメージした切り絵を4つ作ってくれたのだが、この作業も徹夜だったという。このお二人の表現を、この間、三浦さんの死に強く反応した人たちの心情を反映したものとして掲載する。 [追補] ここに掲載した空羽さんの記事には、当初、in the colosetという言葉から連想した彼女の個人的思いが書かれていたのだが、公開後読者からの意見がいろいろ寄せられ、編集部としては公開後早い段階でその部分の削除を決め、空羽さん了解の上で削除した。そのことをここでお伝えします。 (編集部) 俳優・三浦春馬さん(30)の突然の死が、今まで彼のファンでなかった人たちにも「何故ここまで 喪失感で打ちのめされるのか 自分でもわからない」という大きな衝撃を2カ月経った今も与えるのは、「容姿端麗の天分に溺れず謙虚で自分に厳しく、人に優しく忍耐強く努力家で品がありいつも笑顔」という”日本人の鏡”と言える彼でさえも生きてはいけない社会に絶望したからではないか? 多彩で完璧なパフォーマンスの裏には、信じられない努力と作品の持つメッセージを届ける為の妥協を許さぬ練習があり表現を追求し続けてきた彼の覚悟に圧倒される。 ……「日本のミュージカルを活性化する大きな歯車に」「未来の自分に言い訳しないための努力」「世界に向けて発信する俳優に」……未来を見据えた意欲ある言葉。 演技の幅を広げようと日本舞踊、英語、ダンス&ボイストレーニング、ジム、殺陣……。剣術の師、楠見氏は影に隠れた努力が人の10倍あったと語る。 この世を去る日を7月18日に選んだのは、「味方だよ」と常に優しかった彼が、悲しむであろうファンを慰めようと、超魅力的な天才恋愛詐欺師ジェシー役で出演した映画『コンフィデンスマンjp ロマンス編』のテレビ放送日だったからではないか。 映画の冒頭に流れる言葉は 《目に見えるものが真実とは限らない》 人々を癒した無邪気な笑顔の下には、人知れぬ悩みや葛藤があったであろう彼の死を受け入れ、「作品の中に彼は生きている」という正しい落とし所にたどり着く前に命を絶つしか、残されていなかった彼の痛みの前に立ち止まり、心に問うことから逃げたくないと思う。 年間2万人が自ら死を選ぶ日本。 表現者として生き「俳優は”想像力”を与える仕事」と語る彼は【死という最後の表現の舞台】を通して世間に何かを伝えたかったのではないか? その問いに、彼が私達に与え続けてくれた”想像力”を使って応えたい。死を受け入れ、作品の中の彼を愛でるのは、その後でも遅くはない。