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[コラム] 「アジア版NATO」と安倍前首相の大きな影

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ハンギョレ新聞

 4カ国の安保対話を意味する「Quad(クアッド)」は、2007年に当時の安倍晋三首相の主導で始まった。米国、日本、オーストラリア、インドが手を握り、中国に対応するための非公式安保フォーラムだ。安倍首相は「自由と繁栄の弧」という概念を掲げ、米日印豪の4カ国が中心となって中国を包囲しようという構図を描いた。  Quadは参加国と中国の関係に伴って浮き沈みした。2008年にインドのマンモハン・シン首相は中国を訪問し「インドは『中国封鎖』の一員ではない」と宣言。オーストラリアでは中国研究者であったケビン・ラッド首相が就任してQuadからの脱退を宣言し、中国との和解戦略を推進したことで、Quadはうやむやになりかけた。  2017年に就任したドナルド・トランプ米大統領と安倍首相が意気投合したことで、忘れられていたQuadはよみがえった。米中対立が激化したことで、最近この構想は、米日印豪4カ国が核となり、それ以外の国を下位パートナーとして引き入れて中国に対抗する多国間安保機構へと拡大しようという「Quadプラス」へと発展している。冷戦時代にNATO(北大西洋条約機構)がソ連に軍事的に対抗したことを連想させる「アジア版NATO」構想である。  米国は、ここに韓国が参加すべきとの信号を送り続けている。最近、スティーブン・ビーガン米国務副長官とマーク・エスパー国防長官が相次いで、インド太平洋地域にNATOのような多国間安保機構が必要だと述べ、Quad4カ国に加え、韓国、ニュージーランド、ベトナムなどに言及している。来月初めに訪韓するマイク・ポンペオ米国務長官も韓国に対して、中国牽制に積極的に賛同することを求めると見られる。ポンペオ長官は、Quad4カ国外相会談に出席するために東京を訪れる際に、韓国に立ち寄る。  Quadには日本のアジア戦略が込められている。日本の右翼勢力は、日米同盟を強化しつつ韓国や台湾などを下位パートナーとして引き入れ、平和憲法の修正、自衛隊の軍備強化と活動範囲の拡大などを通じて軍事力を強化しようとしている。これには、中国を抑えて日本がアジアの主導権を握るという意図とともに、米国がアジアから撤退する時に備えなければとの不安も作用している。安倍前首相は、南北和解を推進する韓国の朝鮮半島平和プロセスをQuad戦略の障害と考えて執拗に妨害し、退任後も「アジア版NATO」のかたちで韓国外交に大きな影を落としている。  韓国が米日の圧力に押されて「Quadプラス」に参加すれば、まず中国との経済関係に大きな打撃を受けるとともに、韓国は米日が主導する対中国戦略の下位パートナーとして従属し、朝鮮半島平和プロセスは破綻に至り、南北の対峙構造が固定化するだろう。東アジアは長いあいだ軍事的緊張の波の上で揺れ動くだろうが、米国が実際にアジアから撤退すれば、日本は中国と「大国間妥協」に乗り出すだろうし、韓国が損失を被ることになる懸念が大きい。  米中「新冷戦」の結末を断言することはできないが、両大国の正面衝突や完全な決別ではなく、長期間の競争と対立となる可能性が高い。韓国外国語大学国際地域研究センターのパク・ホンソ教授は、著書『米中カルテル』の中で、米中の対立を資本主義の国際秩序の中での一種のカルテル関係と診断している。表向きは戦争も辞さない勢いで争うものの、両国いずれも核を保有しており(戦争は共倒れ)、地理的に離れており、互いに得ている経済的利益が大きすぎるため、談合と妥協をしていく可能性が高いというのだ。このような状況において韓国は、覇権戦争の外見に惑わされ、どちらか一方のみを選択することは警戒しなければならない。大国は争っていても決定的な瞬間には利益のために談合する。壬辰倭乱、日本の朝鮮強制占領、分断の過程で、朝鮮半島は毎回、大国間の談合の被害に遭ってきた。  もちろん、米日と中国の両方からの「我々の側に立て」という圧力に一人で耐えることは容易ではない。しかし世界を見渡せば、韓国と同じ悩みを抱えながら、「敵か味方かの二者択一」に流されない外交空間を作ろうと努力する国々がある。  ドイツは欧州における米国の主要同盟国であり、中国と緊密な経済関係を結んできてもいるが、最近では米中両国と適切な距離を取ることを試みている。トランプ大統領の同盟無視戦略を批判しつつ、中国との経済関係を維持し、米国が要求する華為(ファーウェイ)封鎖にも参加しない。一方では中国の人権問題や市場統制などを批判するとともに、インド太平洋地域においては韓国や日本などの民主国家との関係を強化するという新たな外交政策も発表している。米国と安全保障分野で緊密に協力してきたシンガポールのリー・シェンロン首相も「米国は中国を敵視するのを止めろ」と警告するなど、均衡者の空間を作っている。韓国の進むべき道もここにあるだろう。 パク・ミンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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