コロナ禍の危機対応「事業者の資金繰り最優先」 申込件数は約4万件 商工中金・関根社長
独占インタビュー(前編)
「新型コロナウイルス」の影響で、中小企業の経営は大きな打撃を受けている。こうしたなか、政府系金融機関の(株)商工組合中央金庫(TSR企業コード:299020045、商工中金)の存在が際立つ。危機対応融資などで資金繰りを支援。中小企業を下支えしている。新型コロナの危機対応で、指定金融機関の商工中金はどう課題に取り組むのか。東京商工リサーチ(TSR)は、商工中金の関根正裕・代表取締役社長に独占インタビューした。
―コロナ禍の危機対応業務の動向は
危機対応業務を数字でみると、8月末時点で申込件数が3万8500件、承諾件数が2万4800件。承諾金額は1兆8500億円、実行ベースだと1兆5600億円を超えた。事業者からの相談は4月がピークで、1日800件の相談があった。今は少し落ち着き150件ほどだが、まだ毎日多くの相談が寄せられている。ピークは過ぎた感じはあるが、まだ感染者数も多い状況で、第2波、3波の懸念もある。当面、向こう6カ月程度の資金手当てを行った企業であっても、今後の経済活動の回復状況によっては、再度の資金需要も懸念される。 (危機対応業務は)当初は、とにかくさばくだけで大変だった。本部を中心に100人態勢で営業店に応援を出し、急増した資金繰り相談に全社をあげて対応した。ここまでの状況は初めてだ。責務である危機対応業務に最優先で取り組むため、2020年上期の業務計画は全部ストップし、業績評価も行わない。それほどの事態だった。以前、危機対応業務をノルマ化して不正を起こした経緯もあり、いくら融資をするか、という話ではなく、本当に必要とされるお客さまにいかに必要な資金をご融資するか、という考えで取り組んでいる。したがって、これは業績評価に組み込むものではないし、今まで経験のない資金繰り相談の莫大な数を踏まえれば、危機対応業務以外の業務に取り組める状態ではなかった。 まず最初に影響を受けたのは、飲食や旅館・宿泊などのサービス業で、5月末時点で危機対応融資の実行比率は30%を超えた(商工中金の貸出ポートフォリオのサービス業比率は10%)。しかし、その後は徐々に製造業からの申し込みが増え、5月末に20%であった製造業の実行比率は、足許では30%に増加している。元々製造業は、受注在庫や手許資金を一定量確保しているので、すぐに影響は出てこない。そういう特徴もあり、キャッシュ取引中心のサービス業に遅れて、製造業からの相談が増えたものと見ている。 自動車産業も(影響が)少なくない。「商工中金景況調査」を公表しているが、景況感で一番厳しい回答をしたのが自動車関連、輸送機器の分野。極端に売上が落ち込んでいるという回答が多かったのは飲食だが、全体の景況感では輸送機器が一番悪かった。自動車関連、輸送機器はその影響が加工や素材、電子部品などと多岐に渡り、裾野が広いだけに、あらゆる分野に影響が及ぶ。