子育て卒業間近の”空の巣症候群”を救った価格98万円の温泉付きマンション。伊豆で二拠点生活をはじめたら家族との時間も充実した! 小説家・高殿円
物件探しを通して、自分が求める生活や夢がクリアになっていった
アクセスという点でのネックを解消するため、次は関空からヒョイっと行ける奄美大島で半月過ごしてみた。温泉は必要か、海と温泉、どっちにより魅力を感じているか、自分自身に聞くためだった。 奄美大島は大変魅力的だった。年中冬知らずで夏は本土より湿気がなく過ごしやすい。とにかく目の前に広がる海の青いこと。瀬戸内海とは違うエメラルドグリーンは強い日差しの証し、自分が思っている以上に開けた視界が心をぱっと明るくキープしてくれる。神戸から直行便が出ているだけあってアクセスは文句なし。 太陽の力ってすごいんだ。いまさらながらに南の島でそんなことを自覚した。私は腎臓病になってから長らく薬の副作用もあって睡眠障害を患っていた。15年以上飲み続けた薬なしでは寝ることはできなくなっていた自分自身に対してどこか負い目のようなものもあり、睡眠こそが健康の源だといわれるにつけ、なんとかせねばと焦るばかりだった。 この南の島に家を持てば、この太陽を毎日浴びて起きれば健康になれるのではないかという期待もあった。毎日波の音を聞きながらルーフバルコニーに設置された、温泉ではないが普通のお風呂に入ってみる。最高だった。 すぐに海を見ながらの入浴に夢中になった。善は急げでさっそく物件を探し始めた。車の運転をしない私にとって生活は大事だ。とくにここは離島なので通販で買うにも送料がかかる。島でつくっていないあらゆるものが本土より高い。さて、車なしでよそものが生活していけるのだろうか。 ここで自分のことをまた新たに知ることができた。私は引きこもりが大好きだから、通販でものを買うときいちいち送料に気を遣うのはストレスだった。台風シーズンも未知だった。あとは、やっぱりどう考えても私は温泉が恋しかった。温泉を諦めきれなかった。 それでも十分魅力的ではあったので奄美大島は最終候補に残した。最終的に私は伊豆にぼろマンションを買ったのだけれど、今でも奄美大島のことは大好きで、一年に一度は訪れたいと思っている。