福島県国見町、企業ふるさと納税停止 全国初 「高規格救急車問題」内閣府が便宜供与と判断
内閣府は22日、自治体の地方創生事業に寄付した企業が税優遇を受ける「企業版ふるさと納税」を活用した福島県国見町の高規格救急車の研究開発事業を巡り、不適切な運用があったとして同町の地域再生計画の認定を取り消した。寄付の代償として便宜供与をしたと判断した。町は新たな計画が認定されるまで、企業版ふるさと納税の寄付を受けられなくなる。自治体の事業の適正さを国が問題視し、地域再生計画の認定を取り消すのは全国で初めて。伊東良孝地方創生担当相が記者会見で明らかにした。 計画を取り消されたのは町が防災力や災害対策の充実、新産業創出などを目的に策定し、2021(令和3)年に認定を受けた「まち・ひと・しごと創生総合戦略計画」。町は企業3社からの寄付約4億3千万円を原資とし、計画に基づいて2022年に高規格救急車を開発し、消防組合などにリースする事業に着手。宮城県の備蓄食品製造会社に事業を委託した。その後、この会社の社長の問題発言などを受けて中断した。救急車の開発を寄付企業のグループ会社が請け負っていたため、資金の還流に当たるとの声が町議会などから上がった。
町議会の調査特別委員会(百条委員会)や町第三者委員会が事業の問題性を指摘したのを受け、内閣府は9月以降、町に対して関連資料の提出や事実関係の報告を求めた。10月までの3度にわたる調査の結果、事業の委託先を決める発注手続き「公募型プロポーザル」において、委託を受けた企業に有利な仕様書を作成するなどの不適切な事務手続きがあったと判断した。 地域再生計画は自治体が地域振興の方針を定める計画。国からの認定を得れば企業版ふるさと納税など各種支援制度を活用できる。企業版ふるさと納税は寄付額の最大9割が法人税などから控除される。寄付企業やその子会社が受注しても、公正なプロセスを経ていれば問題はないが、伊東氏は記者会見で「契約手続きの公正性などに問題があった。寄付を行う代償として便宜の供与を行ったと判断した」と説明した。 国見町の事業で製造された消防車は中止後、県内外の消防機関や医療機関に譲渡されている。内閣府の担当者は今回の取り消しについて「実施した事業の内容について、具体的な対応を求めるものではない」としており、寄付金の企業への返還や救急車の処分などは町に求めないとみられる。