「2024年問題」ドライバー不足を救う驚きの仕組み…フィジカルインターネットは物流危機を解決するか
日本のIT戦略は政府が旗振りをしても企業や社会への実装がなかなか進まず、世界のなかで大きく出遅れる失敗を繰り返してきた。IMD(国際経営開発研究所)の世界デジタル競争力ランキングでは、最新の2023年版で日本は3つランクを下げて32位と過去最低を記録した。 PIは、2013年に欧州で産官学連携の団体「ALICE(アリス)」が発足しているが、まだ本格的に稼働した事例がなく、日本も世界と戦えるチャンスがある分野と言える。
■体積や重さがバラバラの荷物を効率的に運ぶには 2年前の記事では、インターネットの仕組みを物流に応用する基本的な考え方を紹介した。インターネットでは、データをパケット(小包)単位で分割し、標準プロトコル(通信手順)を使い、ハブ・ルーターなどの通信機器を経由して高速かつ大量に送信する。 これを物流に応用すると、荷物を、パレット(荷台)などを使って標準サイズにまとめ、標準化された荷札などの情報を付けて目的地別に物流施設で仕分けし、トラックに効率的に積載すれば大量の荷物を運べるようになる。
ただ、荷物は人間と異なり、体積や重さがバラバラで、食品や危険物など種類によって同じトラックに混載できないものもある。国交省では2030年を目指して「パレット標準化」を進めているが、荷物の種類や重さも考慮しながらトラックの荷台をオープンにシェアできるようにするには、ITシステムの開発がカギを握っている。 伊藤忠商事でPI開発の中心となっている住生活カンパニー物流物資部海運・物資課の長谷川真一氏は、1993年に日本で初めて商用インターネットサービスを開始したインターネット・イニシアティブ(IIJ)の技術者だった人物だ。IIJの創業者である鈴木幸一会長のもと、インターネットの開発に携わるとともに、通信装置のモデムを配送する物流担当も経験した。
「IIJ時代からインターネットの仕組みは物流にも適用できるというアイデアは持っていた。PIは共同輸送を実現する物理的な仕組みだが、デジタルの仕組みがないと動かない。伊藤忠に移ってから欧州のALICEに参加し、国際標準化の動向も見ながら、2019年からシステムの開発に取り組んできた」 ■物流施設に集められた荷物をすべてトラッキング インターネットは通信「インフラ」と検索や動画配信などの「アプリケーションサービス」で構成されるが、PIも物流「インフラ」と「アプリ」の両方が重要となる。PIのインフラは、政府が2021年に「物流情報標準ガイドライン」を策定しており、物流データを共有する情報プラットフォームを構築するとともに、「物流施設」が駅や空港のように荷物を積み替える「結節点」となるように機能強化する必要がある。